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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの1000のレビュー・感想・評価

4.3
カルチャーアイコンが彩るレイト60sのハリウッド。情緒不安定なレオ様と、ナイスガイなブラピ。90年代のムービースター二人キャスティングして、2019年にこういう映画を打つこと自体、大それた映画オタクしぐさだ(万が一ジョニー・デップもいたら泣いていた)。全ての映画好きに乾杯。

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』を彷彿とさせるキャスティングのせいで、なんとなく話まで「スコセッシっぽいなぁ」と思いつつ見ていたが、この脱線に次ぐ脱線、飛び交う劇中劇、なるほどこれぞタランティーノだと思わせる雑コラ感は健在だ。
実際、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』はそれ自体、現実に培養された虚構のレイヤーだ。いくらなんでもやりすぎな勧善懲悪は、フィクションとしての痛快さと同時に、その虚構性を自ら引き剥がしていく。おそらく、背景知識なしで「なんとなく実話っぽい」と思いながら見ていた人にも、「んなバカな」と思わせるような仕掛けが、ここにはある(とくにあの火炎放射器)。取ってつけたようなラスト(ハッピーエンドにしてはあまりにおどろおどろしいBGM)も含め、半ノンフィクション映画ゆえの哀愁が漂う。

現実は本当にどうしょうもないので、あんなイカすメンズもいなければ、お利口で超強いワンコもいない。シャロン・テートは殺されたし、ポランスキーはロリコンの性犯罪者だ。現実を歪曲する映画は、罪か?ささやかな救済か?ここには割と重要な美学的問題が落とし込まれている。(先行研究を当たってない、現段階ではなんとも言エマセン

事前情報なしで見に行ったので、「なんだこのヒッピー集落」からの「これってもしやアノ……」と気づいたときが、強烈にサイコホラーだった。
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