むかしむかしハリウッドで…
一時期シャロンテート事件を読み漁ってた身としては、めちゃくちゃ感動した。
こんなステキな映画を作ってくれたタランティーノに心の底から感謝する。
しかしタラちゃん過去作に比べたら大分丸くなったなぁ…そりゃお父さんになるんだもんね…と時の流れをしみじみ感じた(笑)
架空の人物、リックダルトンとクリフブース。この2人をあの映画界に激震が走った忌まわしい事件に加えるだけでこんなピタゴラスイッチが起こるとは…
さらにこの映画の良い所は、これは決してシャロンへの鎮魂歌では無いという事。
あくまでハリウッドで生きる男二人の、長いハリウッド人生のうちの小さな転機の1つでしかない。粋すぎませんか…震
倫理観、実現性、歴史等々抜きにして、街で燻ってた人間が悪者をこてんぱんにやっつけて、不憫な町人たちが救われる!一躍ヒーローとなる!カッコよく去る!
このど鉄板を60年代のハリウッドを舞台に繰り広げるっていう。渋いんだけどオシャレ…
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以下ネタバレあります
ご注意ください
昔、事件に関する記事を読み漁ったとはいえシャロンテートという女優の人となりは分からず、出演作も未見のまま。
この作品に登場するシャロンテートが真実かどうかはさておき、見れば見る程「こんな良い子を死なせちゃいけない」という気持ちを強くさせる。事件の残虐さを知っているからこそ終わりに近づく毎に緊張感が増す。
そして架空の二人と、事実が混ざり合っていく過程でうまいこと二人の魅力にハマっていく。燻っていながらも才能とカリスマ性を秘めたリックと、裏方でいながらも何かをやらかしそうなクリフ。
レオ様の、セリフを覚えられずトレーラー内で暴れ狂うロングカット、からの起死回生の名演技…の流れも圧巻だった。
スパーン牧場でもホラー映画並みの緊張感を纏ったクリフもなかなか。
リックが火炎放射器取り出したのには相当笑わせてもらった、最高。
そしてまんまと二人に魅了されているうちに、ヒッピーの気配と不穏な空気が物語に介入してくる。
しかしながら彼らのお陰で個人的には2パターンのオチを予想しつつ安心して見ていた。
A.標的がリックたちとなり殺される
B.シャロンたちの騒ぎに気づいたリック達が助けに来る
我ながら想像力の乏しさにはびっくりなんだけれども、それ故に嬉しさが倍になった。
リック邸が標的となるだけでなく、クリフがものの見事に返り討ちにしてくれるという。
憎きマンソンファミリーをボコボコにするだけでなく、シャロンの幸せな未来までをも創り出してくれた。
しかしながら冒頭でも言った通り、この映画はシャロンの鎮魂、救いのための映画ではない。
あくまでハリウッドで生きる2人の男の小さな転機の1つに過ぎず、それがたまたまシャロンの運命を変えたというだけの事。