次郎

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの次郎のレビュー・感想・評価

4.1
邦題を直訳すれば「昔むかし、ハリウッドで…」となるタランティーノ流おとぎ話の世界。ディカプリオとブラピが共演し、落ち目のスターとそのスタントマン(ダブル)を演じるというコンセプトからして顕著だが、本作はハリウッドの光と闇、善玉と悪役、ロートルと新星、俳優とヒッピーといった具合に様々な対比が描かれて、それは画面の外で現在のハリウッドと本作を批評的な眼差しとして浮かび上がらせる。ダブルにしてはブラピが全く似せる気もないのはちょっと笑ってしまうけど。あとOPのWストローでチューチューするディカプリオ超かわいい。
それにしても160分の上映時間、大半はルーズな感じで物語が進んでいくのはやはりタランティーノなりの60年代の時代感リスペクトであり、レクイエムでもあるのだろう。映像も音楽もアナログ感強めで、今日のデジタルハイビジョンのパキっとした色彩に比べて、格段に目に優しい感じ。監督自ら選曲し架空のラジオ放送的に仕上げられた全30曲余りのサントラも、メジャーマイナー入り混じった60年代の音源ばかりでとにかく音が丸いまるい。「撮影現場で携帯使ったらクビ」というどんな時代錯誤な戒律だよというエピソード含め、タランティーノのこだわり抜いた(めんどくさい)オタク魂が炸裂している。
個人的に一番印象に残っているが、犬の餌がボトっと落ちるとにかく汚くてマズそうなシーン。上映直後は表紙抜けした感はあるけども微妙かと言われればそんなことはなく、寧ろ観終わってしばらくしてからまたあの世界に浸っていたいとじわじわ思わせてくれる良作であった。最高に笑わしてくれたしね。
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