ひよし

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのひよしのレビュー・感想・評価

4.6
タランティーノ作品のなかではかなり穏やかな映画に仕上がっている本作だが、非常に価値がある……見ていて映画っていいなと感じられる……そんな映画だった。

シャロン・テート殺害事件がストーリーの背景となっているが、これはほんとうに「背景」で、かなり抑制的に描かれている。事件の真相自体はネタバレにならない(歴史上の事件だし……)ので予習していったほうがいいかも。チャールズ・マンソンの出番少なすぎてびっくりしたほど。
この、大事件を徹底的に背景として描くやり方によって、映画そのものはある意味お話らしいお話のない映画になっている。純文学っぽい。もちろん背景知識を含めて見ればぜんぜんそんなことはないわけですが……。

じゃあ何の話なのかというと、主にはリック・ダルトンとクリフ・ブース、時代遅れになった俳優とそのスタントマンの友情が描かれている。これはもう友情という言葉では到底汲み尽くせない。映画転向に苦しむリックを励まし、飲酒運転で免許を取り消されている彼の代わりに自宅まで車で送ってやり、そして郊外のトレーラーハウスにおんぼろ車で帰っていくクリフ。そんな彼に報いてやりたいが、なかなかうまくいかないリック。そんな境遇でありながらも、彼らは絶対的に親友だ。頼もしい。
一方で彼らはけっこうキナ臭いやつらでもあり、特にブースは妻殺しの汚名を着せられていたりする(実際やったのではないかとも思える)。すぐ人を殴るし。その割にはあまり話に後ろ暗さがなく、ここらへんのイノセント感はタランティーノ映画を見慣れているぼくからすると大した争点ではないがまあ気になる人もいるのかも……。

足フェチ、唐突な暴力など定番の要素は健在だが、特に今作で力が入っているなと感じたのは作中作として上映される「古い映画」の数々。決まり切ったストーリーの西部劇とか、覇気のないカーチェイスとか、そういう映画に対しても向けられるタランティーノ監督の愛が感じられた。アガペ。

犬かわいいンゴねぇ……と思って見ていたら大活躍したのでびっくりした。ピットブルファンはぜひ。