このレビューはネタバレを含みます
エンターテイメントの真髄を見ました。
タランティーノに賛辞を送りたい。
舞台は60年代後半のハリウッド。人気女優、キャリアが停滞している俳優、裏方の人々の視点から見えるハリウッドの裏側を一定のシリアス感を保ってタランティーノ節の効いた演出で描いています。
過去作品に比べるとアクション・バイオレンスが控えめでしたが、イングロリアス・バスタースに似た悲劇的な現実を奇想天外に脚色したストーリーがこれ以上ない程最高でした。
シャロン・テートとロマン・ポランスキー監督の多幸感溢れる描写は切なくて胸が締め付けられそうになりました。終始ニコニコしているシャロンが可愛いけど哀しくて。
牧場の場面から空気が一変して、一気に不安が押し寄せてくる演出が凄かったです。最初は和かな表情だった信者達が、洗脳された眼差しに切り替わる所は鳥肌モノ。身震いするほど恐い。
観賞後は、爽快感、充足感、空虚感が入り混じった言葉にならない感情が湧いてきます。タランティーノの最高傑作と謳われるのも納得です。
事実を忠実に描くことが、必ずしも娯楽作品における正解ではない。自分のため、観る者のために脚色したっていい。タランティーノの意図する所に凄く救われました。