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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのnaoズfirmのレビュー・感想・評価

3.5

黄金期🎬

ストーリーは60年代のロサンゼルスを舞台にタランティーノ監督の視点でハリウッドの黄金時代を描いた作品でした。監督がタランティーノということもあり、相変わらずの癖多混じり作品でした。

"シャロン・テート殺害事件"
1960年代にテレビの人気シリーズに出演し、その後、映画に進出した。映画『吸血鬼』で共演したのが縁で1968年1月20日に映画監督のロマン・ポランスキーと結婚したが、翌1969年8月9日、狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者達の一人、スーザン・アトキンスら3人組によって、一緒にいた他の3名の友人達とたまたま通りがかって犯行グループに声を掛けた1名と共にロサンゼルスの自宅で殺害された事件。マンソンはシャロンの前にその家に住んでいたテリー・メルチャーがマンソンの音楽をメジャーデビューさせられなかったことを恨みに思っていたのが殺害の動機です。当時シャロンは妊娠8か月で襲撃を受けた際に「子供だけでも助けて」と哀願したというが、それが仇となりアトキンスらにナイフで計16箇所を刺されて惨殺されました。

舞台は69年のハリウッドです。当時アメリカで何が起こっていたのか、社会や若者の間にどんな変化があったのか、ざっくり頭に入れて置かないと映画を観るのに支障が出ます。当時の背景としては、ベトナム戦争反対運動とともに若者に根付いたヒッピー文化や、ブラックパワーならぬ公民権運動、ウーマンリブなどこれまでの社会に不満や反発を思う人たちの動きが強かった時代です。そこから生まれたカウンターカルチャーとして、音楽は反体制を歌うフォークソングやフォークロックが流行し、世界では新しい波としてレッドツェッペリンやキング・クリムゾンが登場し、ビートルズやザ・フーらが名盤を発表しました。映画業界でいえば、TVの普及によって50年代の華やかさや西部劇も陰りを見せ、アメリカンニューシネマが流行していました。

ストーリーとしては落ち目の俳優とスタントマン、そして隣に越してきた超美人女優の3人を軸に1969年の斜陽に向かっていたハリウッドの華麗で壮麗で光輝いていた時代を完全に再現し、後に訪れる凶悪事件をタランティーノ節全開でアレンジすることで痛快に仕上げた、正に夢物語でした。レオ様演じるリックが落ち目と自覚しながらもブラピ演じるクリフの助言や周りの助けもあって活路を見出す様や、立場上スタントマンであり雑用係でありながらも彼のメンターとして支えるクリフの強さと余裕の表情、ヨーロッパで運命の人と出会い、ハリウッド女優としてのゴージャスな毎日を謳歌し踊り明かすシャロンらがうまく絡みあいながら展開されるドラマが面白かったです。時折時系列をずらしたり、急に撮影本番が入ったり、劇中の登場人物が見ている映画を見せたりと、色々複雑に見せる構造もあって集中力も必要な作品ではあったんですけど、一つ一つのエピソードや構成・カット割りなどを作品への強いこだわりを感じました。そしてそして、終盤のトチ狂ったような殺しはさすがタランティーノって感じでした。
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