文体にのめり込んでしまうタイプの作家がいるけど、僕にとってタランティーノはそんなタイプの監督で、どんな物語であろうと、その文体に触れることができれば満足してしまう。クールなセリフにしびれ、映画のマジックに心を奪われる。
この映画には派手なアクションはないし、事件を知らないと意図が伝わりにくい面はあるけれど、退屈するところはまったくない。
リック・ダルトン、クリフ・ブース、シャロン・テートたちに心を通わせ、60年代のハリウッドの空気を思いっきり吸い込むことができる。特に、運転中のブラッド・ピットの横顔が美しく、時代を象徴させたような輝きがあった。