踊る猫

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドの踊る猫のレビュー・感想・評価

3.3
諸行無常、栄枯盛衰……そんな言葉が思い出される。この映画で描かれるのはどんなヒーローたちもいずれは表舞台から退いていくという端的な事実なのではないかと思った。いつまでも華やかな時間は続かない、という……もちろんブラピとレオの小粋な会話も、シャロン・テートのチャーミングな微笑みも、最後の大立ち回りも印象深いのだが殊に私が惹かれたのは「パンプキン」とレオの会話だった。「老い」を率直に語るレオの姿は、そのまま海千山千を潜り抜けて映画を撮り数多くの栄光を体験して、また数多くのバッシングを浴びて来たタランティーノが体得した哲学のエッセンスがそのまま吐露されているようで面白いと思ったのだ。そう考えるとタランティーノの枯淡の境地が現れたかのようなこの映画が、スリリングでもホットというのでもなく、何処までも弛緩しておりしかしそれでいて侮れない「切なさ」に満ちている原因も掴めるように思うのだ。日常を撮りたいからと言ってストーリーまで退屈にして良いとは思われないので点は低くすることにしたのだが、この「切なさ」へのタランティーノの進化はむしろ次作でこそ開花するように思われてならない。なので、次作を期待したい。引退? いやむしろこれからでしょ!

※それはそれとして、タランティーノは「映画」や「車」や「タバコ」と同じ次元で、「女性」をどうとでも扱える「アイテム」として見做していないだろうか。それだけが引っ掛かる。
踊る猫

踊る猫