NEWおっさん

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのNEWおっさんのレビュー・感想・評価

4.0
「手向の花束をハリウッドへ…」

お馴染みタランティーノ監督の9作目。1969年ハリウッド黄金時代の光と闇を軸に、落ち目の俳優とスタントマンが、ある事件に巻き込まれる。レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットが意外にも初共演でも話題になった。

まずこの映画を見る前の事前知識として、シャロン・テート事件のあらましを知ってないとなんのこっちゃワケ分からないまま見終わる可能性大。詳しくはググって貰うとして、この映画はあるカルト集団に若くして殺されたハリウッドの銀幕スターに対するタランティーノなりのifを描いている。所謂彼女に対する手向の花束と言わんばかりの終わり方に胸を撫で下ろした。

それだけじゃなく、そのカルト集団に対する怒りをディカプリオとブラピを使いボコボコにする個人的な怒りも感じられた。映画としては劇中劇を挟みながら俳優とスタントマンの友情ムービーとしてかなりゆっくり進行するが、ラスト30分でタランティーノの持ち味であるバイオレンスを爆発させる。特に火炎放射器は笑った。そのラストまではなんかタランティーノらしくない進行だなとも思ったが、振り返ればこの無駄な映画愛溢れる演出こそタランティーノだなとも感じた。

マーゴット・ロビー演じるシャロン・テートがまた良い。自身が出ている作品を映画館で見て客の反応に小躍りする場面が良かった。ディカプリオと直接コンタクトを取るのはラストぐらいで、ブラピに至っては会ってもいなく物語は終わるのも安易に絡ませる必要もないだろうみたいな思いがあって良いな。

映画としてはタランティーノ補正もあって面白かったが、事前知識が必須なのと、ラストまでは結構地味に展開するので、退屈な場面も少々あったのがマイナス。テート事件を知らない人が見たら何なんだこの映画で終わったとすら思うわ。昔の映画愛が溢れる人程評価が上がるような作品だった。

余談、劇中にブルースリーも登場するが、あんなキャラにして散々な扱いでクレーム来ないのか、と思ったら現にリーの家族からも反発されて炎上してるじゃん。自分は別段リーに思い入れないので笑ったけど。タランティーノはなんとなくリスペクトしてそうな人物だと思ったのに意外だったな。シャレが通じん相手なのも分かってただろうに。