Yutaka

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドのYutakaのレビュー・感想・評価

5.0
お恥ずかしながら「シャロン・テート事件」知らなくて観てしまって、すごくもったいないことをしてしまった。知っていたら、中盤までのあまり起伏のない展開にも納得行くし、牧場での緊張感がもっと感じられたんだろうと思う。終盤はタランティーノ監督のお家芸ともいえる、緊張からの開放、カタルシス展開で、これこれ!やっぱり信じてたよ!という感想です。

この映画の構造を文章で起こすのが難しい。根本に「映画」があってその上にそこで一喜一憂「苦悩する人」たち。そしてその上に「シャロン・テート事件」があるように僕は思えました。表舞台にはでてこない「映画」を支える人たち、ここでは「スタントマン」に焦点があたっていて、それがクリフという登場人物を通して描かれている。劇中クリフは常にリックを助けていて、スタントという仕事で映画を助け、最後には現実では「シャロン・テート事件」で亡くなった人たちを助けている。普段は表舞台に出てこない人がフィーチャーされ、まさにハリウッドのヒーロー的な強さで悪漢をはねのける内容は、ハリウッドで起こった悲惨な事件へのロックな反撃のようにみえた。

イングロリアス・バスターズやヘイトフルエイト、ジャンゴ等々、タランティーノ監督作品の特徴だと思う長い会話劇でつづられる緊張状態からのカタルシス構造。今回も中盤の牧場のシーンはそれだったんだけど、というか序盤から終盤まで実はずっと緊張状態だった。「シャロン・テート事件」を知っていれば、この映画の題材でそれであることを知っていれば、それを楽しめたのに事前に会えて情報を入れなかったばっかりに、僕が事件のことを知らなかったばっかりにそれを味わえなかった無念さは残る。最後にどんな事件が起こるか観客はわかっている。わかった上でみる映画だった。また数年後にこの映画を見返して、もう一度楽しもうと思います。
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