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輝ける人生のtaruponのレビュー・感想・評価

輝ける人生(2017年製作の映画)
3.9
人生の後半戦にさしかかり、定年の夫の爵位授与パーティというある意味人生の絶頂の場面で夫の浮気が発覚した主婦のサンドラ、それに怒って、最近は付き合いが浅くなっていた自由に生きている姉ビフの元に家出し、様々な出会い、かつて好きだったダンスともう一度出会うことにより人生を見直すストーリー。最終的な結末は、想像の範囲ではあったけれど、描かれるシルバー世代それぞれの人生にリアリティが感じられ、全体に湿っぽさが無く、期待以上に心に響いた。

私的に、すごく心に残ったのが、ビフがサンドラに、チャーリーとの恋愛が始まりそうかを尋ねるところで、サンドラが今からまた相手を信じるということがまたできるかどうかわからないと言っていたところ。(私の大雑把な把握なので、全くこの通りではないと思いますが)そうか、この年代の恋愛は好きだ嫌いだっていうより、心のカギを開いて、相手を信じるということができるかどうかで、それって結構ハードルが高いし、しんどいことかもしれないと、なんかすごく納得した。

全編を通じてサンドラ(イメルダ・スタウントン)の表情の変化がすごい。最初は本当にただのオバサンだし、なんか全体にこわばっている。そして夫の浮気から家出して、疎遠だった姉(セリア・イムリー)のもとに転がり込むものの、自分自身の現状を受け止められず、周りも見えず。こういう感じの人いうよねとは思うものの、表情もきついしこわばり、何の変哲もないネコが毛を逆立てながら虚勢を張っている感じ。
でも、離婚の書類が送られてきて、自分の中で現状を受け入れ姉ビフの通っているダンスサークルの参加し、チャーリーはじめその中の人達との付き合いが深まっていく中で、表情が生き生き、自然な笑顔がでてくる。
そうして良い方向に変化してくるけれど、だからといって別人のようにきれいになるわけでもないところが、リアル(笑)言うても姉のビフほどに奔放で自由になれるわけではない。でも今まで夫に合わせて自分の人生を枠にはめ自分自身と向き合ってこなかった人が、とまどいながらも一歩、また一歩と踏み出していき、表情が豊かになっていく。

ティモシー・スポール演じるチャーリーがとても良い。アルツハイマーでもうすでに夫もわからなくなっている妻への献身、そして妻と距離をおくことを受け入れていく。人生に対するあきらめと割り切りを受け入れること、そしてそういった中でも心に軽さを感じさせ、前向きに自分を解放していくチャーリーの人生は味わい深い。
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