カツマ

エンジェル、見えない恋人のカツマのレビュー・感想・評価

エンジェル、見えない恋人(2016年製作の映画)
3.9
透明の色彩に透き通るほど純粋な想いを色付けていく、運命のようなラブストーリー。乳白色の肌色、吸い込まれそうな瞳。主観となるエンジェルの姿は見えないはずなのに、彼の見ている世界は美しい恋の色に溢れていた。画面はエンジェルの視線をそのまま映し出し、恋するマドレーヌの澄んだ瞳に見つめられる。いつのまにか2人の恋に没入してしまう、純真な恋愛そのものだけを抽出して描いたラブストーリーだった。

登場人物は少なく、エンジェル、マドレーヌ、そしてエンジェルの母ルイーズの3人でほぼ構成される。ロマンチックなサウンドトラックの波に揺れながら、水面の上をただ浮かんでいるような不思議な揺らめきにただ身を任せているような。そんな感じだった。

〜あらすじ〜

母ルイーズは精神病棟で目には見えない子供エンジェルを産んだ。エンジェルの父はマジシャンだったが、ショウの最中に失踪し、そのまま消えてしまった。すでに妊娠していたルイーズはそのショックで精神病棟に入り、そこでエンジェルは誕生する。
姿の見えないエンジェルは母と共に精神病棟内で生活していたが、ある日、病院のそばに盲目の少女が住んでいることを知った。エンジェルと盲目の少女マドレーヌとの出会い。2人は少しずつ愛を育み、共に歳を重ね、愛し合う存在となった。
エンジェルとマドレーヌは幸せだった。だが、マドレーヌは目の手術のために旅立ち、2人は必ずまた会う約束をするのだが・・。

姿が見えないエンジェルと、盲目のマドレーヌ、そのままならば何の問題もなかった。なのに、マドレーヌの目が見えてしまうことによって、2人の幸せな時間は迷いの色を帯びていく。極端な例ではあるけれど、この映画には恋をするうえで必ず生じてしまう臆病な気持ちをダイレクトに描いているのだと思った。

〜おまけ〜

この映画はアート色がかなり強いため、フランス映画やベルギー映画のテイストが得意な人向けの作品です。
フランスやベルギーの性描写は全てを曝け出しながらも、気品があってお洒落。たまにやり過ぎてしまうこともあるけれど、そんな世界観が堪らなく愛おしい。
かつて観たフランス映画『世界で一番不運で幸せな私』が忘れられない映画になったのと同様、この映画も忘れえぬ余韻と共に思い出されるのでしょう。
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