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セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!のohassyのレビュー・感想・評価

4.0
僕が目にする作品だけかもしれないけれど、社会主義地域から生まれる映画って、独特なユーモアのセンスに溢れた優しいコメディ作品ばかりな気がする。
下品なところがほとんどなくて、爆笑はしないけれどなんとなくずっとおかしみに満ちていて、基本的に「みんな仲良く」がベースにある。
もちろん厳しい部分があることも知っているけれど、子供の頃に学んだ社会主義国家のイメージとはずいぶんかけ離れている。

ベルリンの壁がなし崩し的に崩壊して、あのソ連まで無くなってしまって、あれよあれよという間に東西冷戦の構図が消えてしまったあの頃。
アメリカの喉仏みたいなキューバの人たちは、あの時代、世界でもっともあっけにとられていたのかもしれない。
え、そんなことあり?って、まあ思うだろうなあ。
しかも、文句を言おうにもその相手であるソ連がもう無いわけで。

そんな状況の中で2人の「どうにもこうにも行き詰まったおじさん」が奇跡的に出会い、もう1人の民主主義国家のおじさんと、国とか主義とか損得とか何かの都合とかそんなよく分からないものを全部すっ飛ばして、人間同士のつながりと信念と良心で困難に挑み、解決に導く。
国の力で出来なかったことを、いやむしろ国だからこそ出来なかったことを、個人がやってのける。

なんて痛快だ。
国やら主義やら人種やら損得やらの脆弱なつながりなんて、ちょっとした不都合があるだけですぐ機能不全に陥るから、時に正しいことができない。
それに比べて、アマチュア無線だけのつながりで真の友情を作り上げ、軽やかに問題を解決してしまったおじさんたちのつながりの強さよ。
あー、気持ちいい話だ。

映画技術的にも、2001年宇宙の旅へのオマージュをはじめとした特撮は、決してゴージャスではないけれど全くもってチープさはない。
全体をセルジオの娘(死ぬほどキュート)のナレーションで構成する組立が素晴らしくて、ナレーションってこういう風に使うべきなんだなあとすごく勉強になった。
それと真俯瞰映像によるキューバの街並みの楽しさ。
何より全体を包み込む、絵本みたいな演出の穏やかさ。

ソ連の崩壊により宇宙ステーションからの帰還が延期されまくってしまったパイロットという実話と、社会主義崩壊による混沌や貧困の問題を背景に、家族と、人のつながりと、人生を謳歌する喜びを見事にひとつにまとめあげた、超好みな作品だった。
(役者もみんなすごく良かったけれど、キリがないので泣く泣く割愛)

久しぶりにカプリコン1を観なくちゃ。
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