夜空のパンケーキ

獄友の夜空のパンケーキのレビュー・感想・評価

獄友(2018年製作の映画)
4.0
「死刑囚は午後9時におはようって言うんです。今日も死刑が執行されずに生きれたって。」

冤罪で刑務所に入っていた5人の遅れてきた"青春"を追ったドキュメンタリー映画。
非常に上手く日常を切り取った作品で、観終わったあとに「冤罪がもたらした生活」を考えさせられる。

「布川事件」で29年獄中にいた杉山さんと桜井さん、「足利事件」の菅家さん、「狭山事件」で31年獄中にいた石川さん、「袴田事件」で48年獄中にいた袴田さん。
5人は青春時代を過ごすべき時間を、警察の決めつけや強引な取調べで「殺人者」にされた冤罪被害者たち。
同じ境遇の仲間がいたから生きられる。

彼らにしかわからない言葉にできない辛い思い。
しかし、彼らは実に明るく笑顔。
「冤罪だが捕まって良かった」と話す人も。
最初は何で?と思ったが、映画を観ていくうちに少しわかるような気もした。
決して冤罪の原因を追求する作品ではない。

一番印象に残ったのは死刑判決を受けながらいつ執行されるかわからず48年も耐えて、そして無実かもと言われた袴田さんの姿。
出所して会見場に現れた彼は精神的に病んでいて、意味不明な呪文のようなものを語り出した。
無実なのに自由な人生を奪われた人間の生の姿を見せつけられた。
もしこの姿を本当の犯人が見たらどんな気持ちになるんだろうか?

これから順次公開される作品。
第2の人生を歩んだ彼らの姿を見て、自由のない人として人生の大半を歩かなければならなかった意味を考えて欲しい。