垂直落下式サミング

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

4.3
一刻もはやく全身全霊で叩きのめすしかない腐れ外道が敵っていう清々しさ。思想信条そのものが、宇宙中の生命体にとって害毒なハイエボリューショナリー博士。マーベル映画のなかでも、やってることの邪悪さという点においては、シリーズ指折りの悪漢だと思う。コイツが絵に描いたような気取ってる俗物なおかげで、アクションの握り拳にたぎるような感情が乗っかる。あんたには伝わんない表現してごめんよドラックス。
アライグマは、やはり重力の人なのだと思う。空を飛ぶロケット、喋るラクーン、俺の名前は…。かつてみた夢によって宇宙の暗闇を浮游し漂っていた彼の物語は、ようやく虐待の磁場から解き放たれて、自分自身が操る重力でもって二本の後ろ足で自立する。くそったれの産みの親から貰った忌々しい二足歩行で。かつて仲間たちから祝福された「こうありたい自分」の名前と、目を背けてきた「本来の自分」の姿を両方受け入れることで、たったひとりの二十億光年の孤独のなかで、地面に足をつけて真っ直ぐに立っていた。
ガーディアンズさん家は、全員バカのスターウォーズだと思ってたのに、シリーズがすすむにつれて背負ってるものがみんな激重っていうのが実感として浮かび上がってきて、そのなかでも今度のロケットの身の上は、ちょっと笑えないくらいドン引き。お友だちたちと檻のなかにいるシーンとか、もうムリだったもんな。
さすがに『ザ・スーサイドスクワッド』はジェームズ・ガンのなかでも特別で、ディズニー傘下の超大作ではグロテスク表現は控えているのかと思ったら、いやいや、ハッキリとは語られないのに、しっかりとヒドイぞ。
一緒くたに檻のなかに入れられてる動物たち。カワウソの女の子にはロケットと同程度の知性と感情がありそうなんだけれど、セイウチとウサギはあくまでも喋る生き物の域を出ていなさそうなのが、ちょっと悪趣味過ぎません?撃たれたとき、ロケットの後ろで喚き散らすだけだったの、ちょっとみてらんなかった。
湿っぽくなりすぎてもよくないので、キャラ萌えな見所についても記しときたい。ガーディアンズで下等生物といえば、アライグマじゃなくてドラックスってわけ。真正面から胸を、瀕死の状態でさらに背中を、一回づつ光線銃で撃たれてかわいそうだった気がしたけど、なんか次の場面ではピンピンしてて安心な頑丈超人。コメディシーンでは、持ち前の知能の低さによってスポットライトの中心に躍り出る。そんな彼なのに、マンティスのなかに死んだ娘の幻影をみていたのが言葉でなくわかるのが辛い。それでも、自分の引き受けた悲しみを、外側には漏らさない人なんだよな。それが、父親の優しさだし強さなわけで。ささくれだった復讐者だった男の旅はここらでおしまい。
その他、離婚夫婦みたいな関係のピーターとガモーラ2号にしても、幸せ太りしたネビュラにしても、浮かばれてなかったキャラクターたちに、しっかりと落とし前をつけさせていた。これでよかったんだと思う。スタローンも喜んでたし。
アイツらは星ごと絶滅したけど、素体は助けたからいいんちゃう?むしろ救いなのではないかと。獣のまま生きたほうがまし。中途半端な知性は苦しみですよ。