mimitakoyaki

焼肉ドラゴンのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
3.8
大阪万博に沸く1970年、高度経済成長で技術や経済が飛躍的に発展した時代に、伊丹空港のすぐそばのボロボロのバラック小屋に在日韓国人達が住んでいました。
時代に翻弄され居場所を失った彼らがどのような思いで戦後生きてきたのか、波乱万丈の人生と、仕事、恋愛、結婚、差別など家族を取り巻く悲喜こもごもを描いた物語です。

在日コリアンの事をあまりよく知りませんでしたが、終戦まで35年間は日本が朝鮮半島を統治していたので、彼らは職を求めて日本本国に来たり、戦争中は安上がりな労働力として徴用されたりましたが、終戦後はアメリカとソ連により南北が分断され、さらに朝鮮戦争も勃発するしで、長きにわたって日本、ソ連、中国、アメリカなどに翻弄されてきた歴史の中で、戦後も日本に残っても、仕事も得られずに差別や貧困に苦しめられたりして、大変な苦労があったことがわかりました。

「万引き家族」の家も相当汚くて酷かったですが、このキムさん一家の営む焼肉屋もたいがいです。
スラム街のような吹けば飛ぶようなトタン屋根と板の壁でできた粗末な家に住み、でもそこには同じ苦労を味わう韓国人の仲間が集って、家族の結束も強く、弱い立場であるがゆえに共同体意識が強くなるんだと思います。

伊丹空港の滑走路建設や万博建設など、在日韓国人の人達が大阪の経済発展を下支えしてたことも知りました。

戦争によって大切なものを奪われ、失い、絶望の淵に立たされても、それでも懸命に働いて働いて、汗と泥にまみれ地を這うようにして生きてきたお父さんの人生。
そして、だからこそ娘達には幸せになって欲しいと強く願う気持ちがキム・サンホの深い味わいのある演技によって胸に迫ってきました。

言葉の壁や通じない思いなど、家族の誰もが困難を抱えながらも、たくましく生きているその姿に感動もするのですが、なぜお姉さんを愛していたのに妹と結婚したのかとか、解せない部分があったり、見せ方にちょっとクドさを感じたりしたのも正直なところ。
韓国人キャストも良かっただけに惜しい感じがしました。

でも、今もともに日本で暮らす韓国人の人達が戦後どんな歴史を辿ってきたのかを少し知ることができて良かったですし、日本人と韓国人がひとつの作品を作り上げるという事もとても素晴らしいと思いました。

互いに立場の違いを超えて、互いのことを知り、歴史を知り、そして理解し合えたら、それが平和をつくっていくことにもなるので、この作品が作られた意義はとても大きいと思います。
これからも映画を通して繋がり合えたら素敵ですね。

58
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