Inagaquilala

焼肉ドラゴンのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
3.4
井筒和幸監督の「パッチギ!」とほぼ同時代を舞台にした物語だが、あちらの場所が京都なら、こちらは大阪。飛行機の発着が頻繁なため、おそらく伊丹空港の近くだと思われるが、その猥雑な街で焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む一家の年代記。劇作家・演出家の鄭義信が、自身の同名の人気戯曲を自ら監督を務め。映画化。高度成長からは取り残されつつある人々の悲喜こもごもの暮らしを描いていく。

「ALWAYS 三丁目の夕日」を思わせる世界が、大阪という地に場所を移して、人情ドラマが繰り広げられる。タイトルに「焼肉」とは入ってはいるが、あまりそれそのものとしては登場しない。一家は父と母、そして3姉妹に末っ子の長男の6人家族。このほかにも、焼肉店に出入りする人々の人間模様が描かれている。いちおうは北朝鮮に「還る」ことになる長女の静花(真木よう子)とその幼馴染の哲男(大泉洋)が物語のメインの登場人物となるが、舞台劇からの移行してきた作品のためか、その他の登場人物も色濃く絡む。ことさらノスタルジックな映像にこだわっているが、はっきり効果があらわれているとは言い難い。なにか時代を象徴する風景があれば別なのだが。やはり、そのあたりの映像に対する感覚は舞台演出家のそれなのかもしれない。
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