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焼肉ドラゴンのmatsukawaのレビュー・感想・評価

焼肉ドラゴン(2018年製作の映画)
4.5
自分が生まれた年から始まるこの物語、「自分もこの町の隣で暮らしていた」ような感覚があって、懐かしいやら気まずいやら、妙な気分になる。
小学生の頃、近所の橋の下にあの町そっくりなバラック街があって、いつも橋の上から眺めていたのを思い出す。

おそらく舞台版の要素を色濃く残していそうな脚本は、あまり隙間がなく、俯瞰で見る舞台なら丁度いい密度も、距離の近い映画のカメラだとややうるさい。
けれども、そのうるささも含めてとても魅力的だ。
それは一人一人の登場人物が例外なく全員しっかり練り込まれて、ちゃんと生きた人間になっているからで、更に全役者の超名演がその魅力を倍増させて、皆んなキラキラ輝いている。(あの町に住みたくなる)

地を這うように生きる者たちが、それぞれの希望に向かって歩み出すラストに胸が熱くなりつつ、しかしそれはやっぱり半ばヤケクソの希望であり、その後の韓国、その後の北朝鮮、その後の在日コリアンのことを考えると手放しに明るい気持ちにはなれない。そんな陰影を含んだ、立体感のある良作です。

たくさん出てくる俳優が(日本、韓国ともに)全員素晴らしい演技で、ずっとそれを見ていられる贅沢がたまらなく楽しい。
特にイ・ジョンウンは最高中の最高です。
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