小松屋たから

クリード 炎の宿敵の小松屋たからのレビュー・感想・評価

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)
3.9
ロッキーシリーズの中で、「4」は、一番、苦手だった。社会の片隅に置き去りにされたような男こそがロッキー・バルボアだと(勝手に)思っていて、自由主義社会を代表する「キャプテン・アメリカ」のようになってしまったことに違和感を抱いたからだ。

ソ連からの刺客、イワン・ドラゴが科学的トレーニングを施され、ドーピング(?)注射まで打って試合に備える一方で、ひたすら自然の中で鍛錬を重ねるロッキー、という対比もさすがに安易で、プロパガンダ色が強すぎると思ったし、ドラゴがあまりに単純な敵キャラで気の毒に感じたほどだ。

でも、そうか、ドラゴのその後とか、考えたことなかったなー。あの後、ソ連が崩壊しても彼は不遇なままだったんだ。その子供・ヴィクターが…というのはさすがハリウッド、面白いアイディア。

「ロッキー」シリーズも「スターウォーズ」化してきたようだ。次世代へと引き継がれる「フォース」がここでは「リング」となったわけだ。「フォースの覚醒」にマーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードが登場して古参ファンを喜ばせたように、ドルフ・ラングレン、ブリジット・二ールセンがシリーズに戻ってきた。あと十年ぐらい経ったら、アドニスの子供、またはロッキーの孫やヴィクターの子供たちの因縁話が作られたりするのかもしれない。

このような懐古的なシリーズ再構築やリメイクが年々多くなってきたが、これは映画という文化が誕生して百数十年、ギリシャ悲劇やシェイクスピアの戯曲のように、確固たる古典が生まれてきたことの表れなのか、それとも、もしかしたら実は単にネタが尽きてきて、世界展開ビジネスもやり易い過去の遺産に頼るようになってきたということなのか。もちろん後者で無いことを願うが、映画の将来のためには、こういったシリーズの製作者たちは、必ず前作を越える何かを各作品で生み出していかなくてはならないだろう。

「クリード」も、その意味ではもっともっと色々新たなチャレンジやアイディアを見せて欲しいシリーズだ。ロッキーがミッキーのような存在になってきたり、あの曲が少しでも流れればもちろんファンとしては嬉しい。ただ、アドニスはやっぱりロッキーを超えられないな、と思ったのも事実。まだまだ甘い若者に見えるし、正直、這い上がり組のヴィクターの方に感情移入してしまった。でもこういう余計なお世話の「親心」を感じのるは、なんだかんだいって、このシリーズが好きだからなのかも。

ロシアは相変わらず仮想敵国のような扱い。ドラゴは前回以上に切ないポジション。懐かしやブリジット・ニールセンもよく出演したな、と思うがそこはプロデューサーというか元夫・スタローンの力なんだろうか。

もし次回があるなら、ぜひ更なるグレードアップを! 必ず観に行くと思うし。