岡田拓朗

ギャングースの岡田拓朗のレビュー・感想・評価

ギャングース(2018年製作の映画)
3.7
ギャングース

何があっても生き抜け

生まれたときからアンダーグラウンドの中で生きていくことが確定されていたサイケ(高杉真宙)とカズキ(加藤諒)とタケオ(渡辺大知)。

親から虐待され、学校にもロクに行けず、学生時代を少年院で過ごしていた。
でも3人ともグレて少年院行きになったのではなく、大切な人を守るために、友人に騙されてなど、どうしようもない状態で犯してしまった罪なのである。

それにも関わらず、出所してもピンハネなどを食らって表社会で普通に働いて生活することすらできない彼らは、表社会にも裏社会にも居場所を持てずに、裏社会でやりくりする他の少年院の人たちにも見下されていた。

普通に働いて生活する表社会としての生活は物理的にできず、裏社会としての生活は誰かを不幸にする犯罪に手を染めないといけないことから心優しく正しく生きたい彼らにとっては感情的にできず、結局犯罪者だけをターゲットにした「タタキ(窃盗、強盗)」を仕事として行うことになる。

最底辺の中でもがき生きる3人にとって、もう生きる術はタタキしかない。
タタキをしながら何とか生きていた彼らに、更なる試練が訪れる。
東京全域を武力制圧した暴走族で関東地域における裏稼業の頂点に位置する六龍天の傘下にある詐欺を稼業にしている会社のメンバーに素性とやっていることがバレることに。

もう逃げることができない3人。
人生最大の下克上を果たすために彼らはどうする!?

ずっと表社会でのうのうと生きてきた自分には無縁の世界が、そこには広がっていた。
今作の原案は、社会の底辺に生きる少年少女らに長い取材歴を持つ鈴木大介の書籍『家のない少年たち』で、完全なるフィクションとして描かれてると思っていた自分にとって、今作がノンフィクション要素を含んでいることに驚いた。

表社会からも裏社会からもはみ出して、味方がいない最底辺の中で、もがきながら何とか普通の生活を手に入れるために生きる3人と仲間としての強い結束に、次第に胸を打たれていく。

展開はわりと読めたけど、それでもすっきりするし感動するしおもしろい!
入江監督が描くアンダーグラウンドからの這い上がり、下克上は熱量が物凄く、しっかりと社会問題を露わにしていく。

なぜこんなにも誰かのことを考えられる心優しい社会の中の被害者が、普通に生きることすらもできないのか。
加害者として犯罪を犯さざるを得なくなるのか。
闇に振り切れないと生きていけない裏社会。
それは踏み外してしまった、もしくは踏み外さざるを得ない今作に出てくるような人たちを搾取する人がいるからであろう。
序盤の金子ノブアキのおれおれ詐欺の正当性のロジックが(特に普通に生きれない人たちの間では)全くズレてなく聞こえないのがなかなか怖かった。
普通にふらふらついていっちゃって、知らない間に犯罪に手を染めちゃって後戻りできないみたいなのって全然あるような気がする。

これは色んな側面から変えていく必要があるし、様々な選択肢を与えたりすることで、改善できる可能性があることだとも思う。
誰もが健全に人として生きられる社会。
言うは易しだが、本当に難しいことなんだなーと改めて思った。

P.S.
MIYAVIの演技が絶妙に狂っていて想像以上によかった。
ビジランテとギャングースで、入江監督のアンダーグラウンドな作品の中での篠田麻里子は非常にハマることを再確認。
主演3人は高杉真宙があのような役をするのが意外やけど好演、加藤諒と渡辺大知はやはりハマってた。
ヤクザで安定の金子ノブアキに、珍しの林遣都と山本舞香がいずれも好演でよかった。
林遣都はだんだんカメレオンになってきてる!
「湯を沸かすほどの熱い愛」でも思ったけど、伊東蒼の演技は末恐ろしい。
The Gangoose、せっかくならギターMIYAVI、ドラム金子ノブアキのを聴いてみたかった感。
岡田拓朗

岡田拓朗