うめまつ

I am Sam アイ・アム・サムのうめまつのレビュー・感想・評価

I am Sam アイ・アム・サム(2001年製作の映画)
4.0
この映画を初めて観た時、私はスターバックスもセブンイレブンもピザハットも知らなかったというどうでも良い事実にびっくりし、未だに地元にそれらが全部ないことにも愕然とした。そしてダコタファニングの賢者の瞳をした天使っぷりと、ショーンペンの骨身に沁みついた隙のない演技に見入りつつも、昔なら「愛し合う2人を引き裂くなんてふぁっきゅー」とか思ってたところを、今は「愛情は一番大事だけどそれだけじゃ補えない事もあるよね。。」という目線が介入してきて、親権裁判をマーブル模様の気持ちで見ていた。冷酷に見える検事もドライな児童福祉局の人も、皆んな各々の立場でサムとルーシーの未来について真剣に考えているように見えた。

でも初見時から一番時の流れを感じたのは、ミシェルファイファー演じるエリート弁護士に最も心を掴まれたこと。プール付きの豪邸に住みながらポルシェを乗り回す高給取りで、振る舞いも一見自信満々なのに「周りが全員立派に見えて私だけがダメなの」と言って泣く、その姿に嘘はなかった。キツめの美人が心を許してくれる瞬間ってときめきが倍増するからズルイ。始まりと終わりで顔付きが全然違ったし、潤んだ瞳に胸を撃ち抜かれて大好きになってしまった。

気になったのは、カメラが安定せず寄ったり引いたりカットも割りがちなのでお話の質感に似合わず忙しないこと。これはサムの心情とリンクさせてるのかな?障害についても「知能が未発達=純粋で優しい」という側面以外は描かれてなくてちょっとモヤモヤ。でもそれ以外はあまり時代を感じさせない普遍的なトーンに仕上がっていた。ビートルズの小ネタも楽しい。多幸感溢れるラストも大好きで、ぐるぐる回るワンダーな空撮に私の心模様はすっかり溶かされた。どんな家族にもこれさえあれば大丈夫なんてものはない。子育ては一方的なものじゃなく、助け合いながら親も一緒に育っていくものなんだろう。不安はいっぱいあるけれどそれを消せるのは手触りのある愛だけ。やっぱり愛こそすべて。
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