よか

エセルとアーネスト ふたりの物語のよかのレビュー・感想・評価

3.0
字幕
母・エセルは、メイドとしてある屋敷の2階の寝室の掃除をしていて、父・アーネストが下を自転車で通りかかった。母が窓から黄色い雑巾を振っていたのを、父が見つけたんだ。それがすべてのはじまりなんだよ。>原作者インタビューより。

原作者の両親の物語らしく、二人の出会いから死までを綴った思い出アルバムのようなアニメ。最初実写で始まったのでちょっとびっくり。エンドロールも当時の実際の家族写真が使われてる。
世界大戦の開戦〜終戦するころを生きるごく普通のイギリス家族の話。絵本の翻訳者いわくイギリスの労働階級は言葉使いでわかるらしい。

絵本調のイラストで終始素朴で優しいあたたかい画風のなか、戦争のために庭の柵や自転車なのど鉄くずが集められていくシーンや、食堂に作った簡易防空壕で檻のなかの動物みたいに眠るシーン等がしれっと出てくるので興味深かった。
ナチスや広島原爆の話にも少し触れられてたものの、あくまで政治問題ではなく戦争下で過ごす一般人の他人事目線の話なので、見るうえで特に頭を使ったりはしない。
38歳で産んだかわいい5歳の一人息子をひとり田舎に疎開させるときの両親の気持ちは計り知れない。

私はここで言う家族としての幸せの形に憧れみたいなのがなんもないけど、穏やかなものは見て取れた。
あと原作者の奥さんがじつは統合失調症だと明かされるシーンがあり、作者の人生のほうも見てみたいと思ってしまった。
結婚するまで両親にその話をしないだとか葛藤はあっただろうに、そういうところは書かれず、ただ両親に療養を兼ねられる新居を見せた場面で「陰気な場所」って言われたのはしっかり入っていて、ちょっと笑ってしまう。
そういう小さい棘が心に刺さって抜けないことってあるよね…。

二階建てバスへの憧れがすごいあることに気付いた。二階建てバス乗りたい。
よか

よか