ゆりな

エセルとアーネスト ふたりの物語のゆりなのレビュー・感想・評価

4.2
絵本がそのまま動いている、夢のような映画!

最近のCGアニメの進化もすごいし目を見張るけれど、こういった鉛筆で描いたすてきな作品ももっと増えてほしい。街の描写が素晴らしい。
冒頭の曜日がどんどん過ぎていくところは「パターソン」みたい。わたしこうゆう物語がすきなんだなぁ。

ポスターに「普通を懸命に生きた全ての父と母へ」とあるのだが、ほんとそのまんまです。

DIYしたり家具持ってきたり、暮らしを工夫したり……とにかく、かわいい。花柄のお部屋の壁紙、テーブルクロス、食卓にいつも飾られているお花と花瓶、たくさんのティーカップとお皿。
バースデーカードが毎年大きなサイズになっていくの愛すぎんか?

「おさるのジョージ」の作者夫婦を描いた「モンキービジネス」もそうだったけれど、2人の人生だけじゃなく、戦争時代のこともよく分かる。
疎開先のクリスマスケーキにスノーマンが乗っていたの粋でクスッとしちゃった。原作にもあるのかな。

歳をとっても小競り合いしても、絶対に一緒にいる2人が可愛くて、どうしても世話焼きで息子が大好きなエセル(母)と社会のことを語りたがるアーネスト(父)がかわいかった。
本作のアフレコに立ち合ったブリッグスが、そこに父と母が実際にいるみたいで泣いてしまった話にまた涙。

歳には敵わないと分かっていても、老いてボケが進む姿と最期にどうしても泣いてしまった。
新しいものが大好きなアーネストも、エセルがいないんじゃ手を出さないし、一人でたのしそうに過ごすわけでもない姿が寂しくて、息子がいても別物で泣いてしまった。
祖父母はピンピンコロリだったけれど、父が老いて病気で死んだので、その姿を見るのはこわかったな。

この映画、死をきれいでドラマチックなものではなく、あくまでも静かで現実的に描いている。ラストも特に感動的に終わらず、スッと終わる。

エンディング、ポール・マッカートニーの描き下ろしなのは、ブリッグスのファンだからそうで。
パソコンから観てしまい、テレビでちょっと冒頭観たらあまりにもきれいさが違ったので、もう一度見たい。

ずっと「いつ見ても感動するだろう」と思い先延ばしにしていたけれど、早く観ておけばよかった!
ゆりな

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