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イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語のslvのレビュー・感想・評価

3.8
「この世界は僕向きじゃない」

この言葉がこんなにも痛切に心に滲みてくるとは…

期待値低めに鑑賞に挑んだけど、なんか想像以上に刺さってしまった。

自分の生きる世界にうまく馴染めず、取り残されたような疎外感を覚えたり

就職しても社会に適合出来ず、どう生きていったらいいのかわからないもどかしさを感じたり

夢や理想はあるのにそれをどう実現して良いのかもわからず、孤独なまま、ひたすら自分だけの世界に逃げ込んだり

そんな感覚や経験に少しでも身に覚えがあるようなタイプの人(私だ)には、このスティーブン・モリッシーの苦悩と挫折の物語に凄く共感出来る部分があるのではないかと思う。

「僕向きじゃない世界」の中で、それでもなんとか自分の居場所と生き方を見いだし、その情熱と才能を開花させるまでのストーリー。

モリッシーらしさ全開の哲学的・詩的な言葉と、彼に影響を与えた70年代の音楽がその物語を彩っていく。

似てないんじゃないかと思ってあまり期待していなかったジャック・ロウデンだけど、最初の長髪のスタイルこそ似合わなくてなんか違和感がありつつも、だんだん本当にモリッシーぽく見えてきた彼は、皮肉屋ながら可愛げのあるキャラクターがハマっていてなかなか良かったと思う。

唯一のライブシーンでは、その歌声も予想以上にモリッシーでとても良かった!

そしてラスト、ジョニーとの出会いの描写が凄く凄く良くて、息苦しさの中からやっと希望の光を見いだせたような瑞々しさに、静かに胸が熱くなった。救われたような気持ちになって、ホッとした。

出来ることなら、ここからの物語も続けて観たいと心から思った。
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