RiN

キンキーブーツのRiNのネタバレレビュー・内容・結末

キンキーブーツ(2005年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

『女々しいチャーリー坊やとパワフルなエンジェルボーイ』

チャーチ、トリッカーズ、エドワードグリーン…数え上げたらきりがありませんが、イギリスの紳士靴といえば、伝統の代名詞のような存在です。もちろんお値段も張りますが、一生モノとして日本でも人気の高い数々。しかし、大量生産大量消費を推進する資本主義ブームメントの中で、当然多くの伝統靴メーカーは姿を消しました。
今作は、そんな波に負けそうになり、逆境の中でとあるパワフルなドラァグ・クイーンと出会い「男性向け女性靴」を作り生き残った、実在の靴メーカーを描く傑作コメディです。

英国は、伝統と品格の国であると同時に、偏見と差別の国です。大英帝国時代、多くの国を隷属化し、その国々から搾取し大きくなった国でありながら、白人以外の人々への尊敬がほとんどと言っていいほどありません(もちろんインテリジェンスを備えたリベラル派も多くいますが、残念ながら多数派ではありません)。
そんな国にとって、しかも田舎では、「女装家」で「ゲイ」で「黒人」は、マイノリティ中のマイノリティ。過激な言い方をするなら、格好のターゲットです。ローラは、そんな存在でした。

しかしローラは、そんな偏見や差別には動じません。強く賢く美しく、靴のデザインセンスにも優れ、なにより控えめです。下品な揶揄も、小粋なジョークと女っぷりのある小技でかわしてみせます。さらに、チャーリー坊やの後始末まで完璧にこなして、優雅に微笑むのです。
…ざっけんな!!!!
いやー、なんて都合のいいクイーンなんだろう。そうかエンジェルボーイか。本当に天使か。
もう、ローラがかわいそうで、コメディのはずなのに泣きそうでした。こんなに尽くして、甘えまで許して、助けて、愛して、その上でかっさらわれるの?切ない。
そしてチャーリー坊やのなんと女々しいこと。うすうす気付いてるだろうに、さらっとローラの好意をシカトするところも、甘ったれて一番言っちゃいけない言葉で傷つけるところも、お前ふざけんなよ!!!と何度切れそうになったか。
彼女、苦労するんだろうな…。

そんなことよりストーリーと歌とダンスは完璧でした。やっぱりデヴィッド・ボウイなのね。
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