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マローボーン家の掟のSSDDのレビュー・感想・評価

マローボーン家の掟(2017年製作の映画)
4.2
■概要
とある一家はイギリスから父親から逃れてアメリカに流れ着き、過去母が住んだ家に隠れて生きる。過去を捨てて生きようとする3人の子供たちと母親。幸せに暮らすのも束の間、過去が悪夢のように戻ってくる…。

■感想(ネタバレなし)
丁寧に作られた伏線と、現在と過去が入り乱れて進むような展開をスリリングに魅せる良作。

前情報なしに観たので、どういうジャンルなのかわからず、複数の可能性を考えながら観てもまったく異なるシナリオに痺れた。まったく知らなかった作品だが、かなり良作。

ヒューマンドラマとしての完成度が高いため、ホラージャンルとしてかなり昇華されている。

ネタバレ厳禁のためレビューなどは見ない方が良い。













■感想(ネタバレあり)
・スピリチュアルかサスペンスか
初めはどっちに触れるのかわからなかったが、父親が冒頭のシーンで現れていた示唆があったので家で死んでいるのはわかっていたが幽霊と化したのか生きているのか時間の経過がわからないのでなんともわからなかった。
予測としては、死んでいるが兄が父親の人格を継承していて気絶してる間に父親のように殺人をしているのかとも思った。鏡を見ない理由は父親に変貌中の自身を見ないためかと…。

予想に反する、ほぼ全滅している悲しい物語に驚いた。

・冒頭のシーン
よくある冒頭で先のシーンを挿入する手法だが、どのタイミングでこのシーンに行き着くのかとまったくわからない状態で観せるやり口を綺麗にできる映画は大抵良作。
時系列を分解した上で、どこの内容を見せればより好奇心が湧くかをよく捉えているためまんまとしてやられる。
しかもこの話は時系列を何回も入れ替わるので特に面白かった。

・掟という伏線
-母親の言う過去との訣別手法
この線を跨いだら忘れてしまうのだという暗示をかけ、お互いに忘れたのだから過去は話せないという掟。
これは一回きりかと思っていたのに再度、長男が弟たちが死んだ後に使うことで死んだ事実を忘れる暗示のために使うのは泣ける。
-割られた鏡
鏡がなくなった時系列の見せ方がうまい、兄弟達が死んでから長男が鏡を見て自身が誰かを思い出すのを辞めるためというのが物悲しい。
-砦
逃げ込む場所を作れという母の教えを曲解して子供の基地のようなシロモノになっていたが、聖堂のような宗教的シンボルにまで昇華していて精神的な逃げ場になっているのが面白い。
死んでいることを思い出しそうになったら逃げ込む場所として家族の存在を残し続け、部外者には立ち入らせないことで死守していた。
-必要以外では外に出ない
初めに近隣の友人に会っていた兄弟という過去でミスディレクションを誘って、あくまでも長男以外は外に出てないだけと思わせておいて実は死んでいるから誰も会えないというのは見事だった。
時系列の使い方がうまい。

・最後のシーン
ことは父親のせいで母と兄弟、弁護士と父親が死んだことは世にも知れ事後処理も終わっているのだろう、恋人は長男の代わりに精神科医に薬をもらいに行く。
洗面所の棚には飲まれていない薬が溜まっている。
これは二つの可能性がある気がする。

-長男のために薬を飲まさない
薬を飲んでしまえば精神安定を得られるかもしれないが、家族との思い出まで消してしまうため薬を飲ませないという選択をした優しい恋人というラスト。

-長男も死んだ
長男も父親との戦闘で傷を負っており、最終的に死に至っているが恋人は長男同様に、頭の中で長男を生かし続けていて家に取り憑かれたように暮らすラスト。

後者を否定したいのだが、否定し切れる材料が乏しい。洗面所には鏡があったことから長男の死んでいないとも思えるが…いずれにしても物悲しくよくできた作品でした。
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