アンダーシャフト

マローボーン家の掟のアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

マローボーン家の掟(2017年製作の映画)
3.6
人里離れた古い一軒家を舞台に繰り広げられるホラーサスペンス…と言ってはみたものの、う~ん…ジャンルはこれで合っているのか悩む作品。

訳あって、人里離れた一軒家に移り住んできた母親とその子どもたち。過去と訣別し、家族みんなで人生をやり直すために、母子は5つの決めごとを自分たちに課し、新天地で心穏やかな生活を始める。しかし、しばらくして病弱な母親が体調を崩し、還らぬ人になってしまう…
そして、残された子どもたちは彼らだけで暮らし始めるのですが、その頃から、家の中で不可解な現象が起こり始めます。

前半から中盤、長男のジャックと隣家(といっても2~3kmは離れてますが…)の女性との恋物語や、その恋に割って入ってきた若い弁護士(?)との確執、決まりを破らなければならない状況に直面して悩む兄弟たち、協力して生活してきた家の中に生まれるストレスと不協和音など、自分の想像と全く違ったヒューマンドラマ的展開が主で、怖いシーンはちょこちょこだったから、半ば戸惑いながら観てました。

それに対して後半は、俄然ホラー色が強い展開にシフト。
家族の忌まわしい過去、掟を守らなければならない理由、そしてこの家で数々の不気味な現象がなぜ起こるのか、それらの輪郭がだんだんはっきりしながらクライマックスへと収斂していきます。

でも、全ての謎が明らかになった時の感慨は、正直「そゆこと…」みたいな感じ。
徐々に積み上げられていく恐怖の演出がとてもいい出来だけに、このラストは好みと評価が別れるはず。(これ以上は何も言えねぇ…)

実はこの映画、ホラーサスペンスにはちょっと珍しい、自然豊かなロケーションが印象的。
家族が住む大きな一軒家は洋風古民家(って言いますか?)で、たくさんの窓から柔らかな陽光が差し込むいい雰囲気。荒れた庭には大小の花をつけた野草が群生し、家の裏に広がる草原の先には緑豊かな森。
少し離れたところには海を見下ろす高台、その下に続くきれいな砂浜…その砂浜を、ジャックと恋人が並んで歩くのが小さく見える…みたいな、奥行と広角を生かしたカットも含め、美しい映像がここかしこに見られます。

他の方たちもおっしゃっているように、兄弟を演じた若手俳優一人ひとりの個性&魅力溢れる演技+子役の可愛らしさは◎
家族の因果から生まれた恐怖と悲劇を描く、とても怖い(自分は十分怖かった)一本です。


次男のビリーを演じたチャーリー▪ヒートン。角度によってなんとなく窪田正孝に似てるように見えたのは自分だけか…