まいこ

ゴッズ・オウン・カントリーのまいこのレビュー・感想・評価

3.5
「神の恵みの地」と呼ばれるヨークシャーを舞台に、大自然の中で求め合う2人の孤独な青年の愛の行方を描き、ベルリン国際映画祭をはじめ世界各地の映画祭で高評価を獲得したラブストーリー。

年老いた祖母や病気の父に代わり、家族経営の寂れた牧場を切り盛りする青年ジョニー。孤独な労働の日々を酒と行きずりのセックスで紛らわす彼のもとに、ルーマニア移民の季節労働者ゲオルゲが羊の出産シーズンを手伝いにやってくる。はじめのうちは衝突してばかりの2人だったが、羊に優しく接するゲオルゲに、ジョニーはこれまで感じたことのない恋心を抱きはじめる。

いつの間にか好きになって恋に落ちて、相手にずっと隣にいて欲しくて欲が芽ばえる、何も変哲もないただの恋愛物語。しかし酪農、社会構造などといった要素やキリスト教的メタファーによって世界観が確立され、"ただのラブストーリー"という枠には収まらない。人と人の繋がり、無償の愛、近くにあればあるほど気がつかない、それを再確認させてくれる良作。

५✍( '▿' )メモ
本作のエンドロールの背景には、古い時代の麦の刈り入れの映像が映し出されます。一見本編とはつながらない映像ですが、一面黄金色に染まった畑で大人も子供も総出で刈り入れをする人々の姿は収穫の喜びに満ち、フランシス・リー監督が敢えてこの映像で作品を締めくくりたいと考えた意図がよく分かる気がします。ある意味、この作品自体も彼なりの農業讃歌なのかもしれません。
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