LcK0812

ゴッズ・オウン・カントリーのLcK0812のレビュー・感想・評価

4.5
舞台はブレグジット前のイギリス、ヨークシャーの家族経営農場。
屋根もない山小屋や崩れた石垣、足が悪く介護が必要な父親と高齢の祖母。
いつ潰れてもおかしくない限界の環境に主人公はいる。
手伝いにきた移民の青年に対してジプシーと悪態をつき、適当にひっかけた男相手に性欲処理を続けているクズでも、この環境から逃げない、逃げられないことから根は悪くないやつなんだといつしか擁護していた。

荒涼とした大地が広がる風景に、音楽はなく鳥の声や風の音だけが響く。
静かでセリフも少ないぶん、登場人物の視線は複雑でどこか寂しく温かい。

最後はイギリスがおかれた政治的な環境まで考えると、これ以上なく美しい終わり方だった。
ただ単にLGBT映画というだけでなく、文化や環境さまざまなものを越境する人間讃歌だ。

【追記】
他の感想を見ると「ブロークバック・マウンテン」と対比させるものが多いようですが、60~80年台のアメリカと、2015年のイギリスを一緒に語るのはさすがに乱暴だと思いますので追記しておきます。牧場しか共通点がない。
LcK0812

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