ほのか

ゴッズ・オウン・カントリーのほのかのレビュー・感想・評価

4.3
恋を知り、愛を受け入れる。



牛、羊、体の不自由な父親、常に何か不満を言いたげな祖母、ゆきずりのセックス。命令をされ、なんとなく不愉快になるも気持ちは燻らせるだけで終わり、発散するために酒を飲み、誰とも知らない相手と交わる。悪循環のレールから抜け出せない。そのレールごとヒトと動物の境目にズブズブと沈んでゆく。

ゲオルゲはそんなジョニーの視点をガラッと変えた。不満の対象でしかなかった場所、何でもない景色を美しいと、彼はそう言った。彼がそう評すると世界は途端に色づき、自分ではどうしようもない地点まで沈み込んでしまったジョニーをヒトの位置に引っ張り上げた。先が見えなくなり、何も考えられなくなり、足が止まりそうになった時、彼は食卓に花を飾った。質素で簡素な食事ではあったが、美しいを愛でる丁寧な暮らしは逸った人の心を落ち着かせる。美しい、美味しい、嬉しい。たったそれだけ、されどそれだけの感情を思い出させてくれることのなんとありがたいことか。

ずっと押さえつけられていた。ジョニーが生きる世界は父親が仕切った柵の中でしかなかった。自分をこき使いたいだけだと思っていた父親に謝られ、褒められて、初めてジョニーは父親も人の子だったことを知り、驚き、唖然とする。
「それでお前は幸せになるのか?」
幸せ。幸せになれるよ。俺だけの力では無理だけど、今までのやり方では無理だけど、ゲオルゲが共にいてくれるなら。最後までゲオルゲの愛を受け止め切れてるのか、なんだかまだこの幸せを信じ切っていないようにも見えたけど、ルーマニアへの一歩が出るのであれば次の一歩だってきっとすぐだ。



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兵庫にくるのをずーーーーっと待ってた!!!!やってくれるとしてら元映かなあと思ってたらまさかの塚口が一番手だった!どっちにしろ観られて嬉しい〜!!!
今塚口でGOCに合わせて、キャロルとCMBYNも上映しているんやけど、キャロル観てる時に3作品とも"相手の衣服"がキーアイテムになってるの気づいて号泣した。エモーショナルが爆発している…。