冒頭の、どんよりとして、観ているだけで寒さが伝わってくる冬の風景とジョニーの嘔吐のシーン。それだけで、暗く、鬱屈とした雰囲気が漂う。
序盤は、嫌々ながらもお金のためだけに、父から言われるままに家業を手伝うジョニーの感情と行動が生々しく描かれる。
ジョニーと父、祖母との関係性が、少ない台詞と振る舞いから、とてもよく伝わってきた。皆、苛立っていて、でもそれを伝えられずにいる。なんとも言えない閉塞感を感じた。
それが、ゲオルゲの登場で、少しずつ変わっていく。ゲオルゲの凛とした雰囲気や、優しさや、しなやかさ、仕事に対する柔軟で真摯な姿勢が、とても魅力的で、ジョニーの感情をなぞるように、私も、彼に惹かれた。
性描写は生々しいのだが、全くいやらしさは感じなかった。ゲイとかそういうことは関係なく、人間が、人間の優しさに触れ、癒され、惹かれて、愛し合う過程が美しかった。
美しいけれど寂しい、と、ゲオルゲが言ったヨークシャーの風景は、ジョニーの心境とシンクロしているようだった。静かなのに、観せる、素晴らしい作品であった。