ゆみな

ゴッズ・オウン・カントリーのゆみなのレビュー・感想・評価

4.5
君が居れば世界は輝く


某アーティストさんの歌でもあるけど、ちょっと前までジェンダームービーっていえば『死ぬか病むか恋に敗れるか』って展開が多くてね…いい映画だってあるけど、そればっかじゃないでしょ?って思っていたわけで…いやまじで判んないよってね。でも、ここ数年ハッピーエンド多くなったよね。観終わった後にほっこりした気持ちになれる。これもまさにそんな映画でした。好き。

ストーリーも至ってシンプル。
ジョニー(ジョシュ・オコナー)は病気の父と祖母と暮らしながら、ヨークシャーにある牧場を1人で管理していて。彼はとにかく孤独なんですよ。チャラチャラしてる若者達とは住む世界が違っていて、だからといってそこから逃げ出すことはできない。孤独で過酷な牧場での日々を、アルコールと適当な相手との不毛なセックスでなんとかやり過ごしていた彼の前に、ルーマニアからの季節労働者ゲオルゲが現れる。初めは敵対心剥き出しだったジョニーなんだけど、ゲオルゲの優しさに触れるうちに自然と恋に落ちていく…って感じの話ですかね。

序盤に凄く印象的だったシーンがあってね…救えなかった仔牛をジョニーがやり場のない気持ちをぶつけるように蹴るんですよ。これ、動物好きにはモヤモヤするシーンかもしれないんだけども、私は胸に刺さりまして…。そしたらゲオルゲは今にも死んじゃいそうな産まれたばっかの仔羊を助けるじゃんね。なんかもう…それ見たら惚れるじゃん。ジョニーの事だって当たり前に孤独のどん底から引き摺りだしてくれそうな気になるじゃん。あと、ゲオルゲって本当に優しい。優しさに溢れているなぁって、セックスとか見てるとわかるもん。欲望をただ満たすだけではなくて、愛を感じられるのよ。この映画って風景もエロさも痛さも生々しくてとても好き。


あと、ラストの展開も胸熱でね。
ジョニーが自分の気持ちに嘘をつかずに、行動を起こすのが素晴らしい。ちゃんと逃げずに父親に自分の思いを伝えて、その決意を胸にゲオルゲに会いに行くくだりは親心じゃないけど泣きそうになるよ。2人の間に流れる空気がサラッと変わっていくとことか、バスの中の2人とかめちゃめちゃ良かったなぁ。ジョニーって序盤は無表情で生きてることがつまらないって顔全開だったのに、ゲオルゲといい仲になったらニコニコしちゃって甘えたりして年相応の青年になってさ…なんか、そういうの見てたら恋っていいよなぁ…って思ったよ。ゲオルゲが『美しいけど寂しい』って言ってたあの風景だって、この先2人でいればもっと輝いて見えるんじゃないかって素直に思えた。


なんかこの映像好きだわ~って思いつつ観てたら、『ザ・ライダー』の撮影監督のジョシュア・ジェームス・リチャーズだった。そりゃ、好きなはずだわ。あと、エンドロールの曲がパトリック・ウルフの『The Days』で、これもまた好きだった。忘れないように書いておく。
ゆみな

ゆみな