映画漬廃人伊波興一

待ち濡れた女の映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

待ち濡れた女(1987年製作の映画)
3.3
全ては雨のせい 上垣保郎「待ち濡れた女」

完成された作品が上出来、不出来という以前に出現した時代に封印された不幸な映画というのが存在します。
小沼勝「軽井沢夫人」柴田敏行「武蔵野心中」池田敏春「魔性の香り」そして上垣保郎「待ち濡れた女」など。

特に本作が公開された86~87年というのは文字通り目も当てられぬ日本映画暗黒の年。
「ビー・バップ・ハイスクール」や「私をスキーに連れてって」「マルサの女」「女衒」「竹取物語」等、奇妙に注目されながらも、作り手の慎み深い野心に一瞬たりとも触れぬまま観終える切なすぎる映画が量産されていた年でした。

個人的には充分に(観て損のない映画)と思っておりましたが、蓄電容量が潰えたつつあるような淡い光の魅力が当時の受け手に届かなかったのは、劇中で中村晃子が若い男と行きずりの関係を結ぶキッカケとなったセリフの如く「全ては雨のせい」だったのかもしれません。