油淋鶏大盛り

バイスの油淋鶏大盛りのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.0
見ながら、考えが飛んでってしまうところが、いくつかあって、最初から最後まで、いい意味で、集中できない時間が頻繁に訪れる。こんな感覚そのものが、アダムマッケイの術中にはまっているのかな。

まずは、役者陣の奮闘ぶりとキャスティングの妙。SカレルもSロックウェルも、ルックスは激似なのに、声までは変えられない、その可愛らしさが楽しく、ホワイトハウスにエディサーマン? そして誰かと思ったらNワッツやん、なんてとこ。

それから、アメリカ現代史の闇や二大政党制故の揺り戻しに対する作り手側のあからさまな視点と立ち位置の加減が、とても巧みで柔軟な感じ。さも当たり前のように、その手がありますよなんて、法に基づかない政策転換や権力行使がちょっとファインプレーのように描かれるけど、アメリカだけでなく、世界中に蔓延してるこういう政治姿勢は感染症より恐ろしいじゃないの、なんて思わせつつも、あくまで軽い。

軽さのもとは、実映像を挿みつつ、思い切り振り切った構成とSNLの政治ネタ的なデフォルメ、皮肉り方にも複数パターンあって、とっ散らかってるから、存命者の実名展開なのに意外にさっぱりした味付け。そして、一般市民のレベルをかなり軽んじた描写は、前政権下での制作と思えばなるほどなんてとこも面白いし、政治家は国民を欺いても、あくまで必要悪として正当化する世界を、しっかり見とかないと…。