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バイスのKUBOのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
3.7
ある程度知っているつもりだったけど、知らないことってあるな〜。イラク戦争はブッシュが起こしたと思ってたけど、副大統領のチェイニーの陰謀だったなんて、またまた映画で勉強しました。

9.11以降、アメリカがイラク戦争を始めるまでの政治劇、だと思って見始めたが、少し違ってた。前半は当時の副大統領だったチェイニーの半生。若い頃から権力を握るまでを描いていて結構長い。

劇中でニクソン失脚の場面が出てくるが、この「ウォーターゲート事件」を描いたのが「大統領の陰謀」「ペンタゴン・ペーパーズ」「ザ・シークレットマン」。関連の作品を見ていると、ニクソンの退任演説の裏にある重層的な事実が見えておもしろい。

この若い頃から副大統領になるまでの、どんどん太っていって老けてくる様子を、お得意の体重増減と特殊メイクでクリスチャン・ベールが評判通りの怪演。

ラムズフェルド、ブッシュ、パウエル、リアルタイムで知っている政治家がバンバン出てきて、みんな似てるんだけど、ライス国務長官が似過ぎてて笑った!

「華氏911」で、ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ後も、小学校で読み聞かせを続けるブッシュの姿をカメラが捉えていたが、まさにあの瞬間にホワイトハウスではこれぞ千載一遇の大チャンスとチェイニーが動き出していたのね。そしてこの後に起こるイラク戦争への道は「記者たち」とリンクする!

「一元的執政府論(行政機能を持つ全ての機関を監督する権限)」

「UNODIR=Unless Otherwise Directed(緊急事態の場合は現場で判断する、という特別な命令権)」

9.11以降使われるようになった政権の暴走を許すような法解釈がバンバン出てくるが、この辺のところは最近の日本と似てないか?

「マネー・ショート」のアダム・マッケイ監督作品ということで期待が大きかったことは確かだが、ドラマの間に突然入るナレーションがマイケル・ムーア作品のようだったり、ギャグがやり過ぎで笑えなかったり、作品としてのバランスはちぐはぐな感じがした。ドラマならドラマ、コメディならコメディ、ドキュメンタリーならドキュメンタリーとハッキリした方がよかったのでは?




*ラストでアメリカ国民の民度まで笑いのネタにしてしまう辛辣なブラックジョークには笑った。
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