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バイスのnetfilmsのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
3.8
 自身の酒癖の悪さが災いし、男としてのプライドもズタズタにされ、当時の恋人にひたすら罵倒された元大学生の口から出た言葉、「2度と君を失望せないよ」。どんな政治哲学よりも男の信念はこの言葉に象徴される。ボソボソとか細い声で話しながら、何を考えているのか誰にもわからない男の信念は、政界入りして民主党か?共和党かを迫られた時にもいかさま的な直感を発揮する。イェール大学を中退となり、ワイオミングの電気工から、後にアメリカ合衆国の副大統領にまで登りつめた男ディック・チェイニー(クリスチャン・ベール)の人生は幼少期から波乱に富んでいる。1968年、インターンシップに参加したチェイニーが出会った運命の男、メンターとなるドナルド・ラムズフェルド(スティーヴ・カレル)の教えは彼に天啓のような閃きを与え、その後の彼の人生を決して権力の中枢から逸れないよう強固に結び付ける。その腐れ縁の関係性はご存知のように、ジョージ・W・ブッシュ政権での副大統領と第21代国防長官という役職でも続いて行く。

 奇しくもロブ・ライナー監督の『記者たち~衝撃と畏怖の真実~』と同じ題材を扱う物語は、現代のカメレオン俳優、クリスチャン・ベールが20kgの増量をして臨んだことも話題だが、ジョージ・W・ブッシュ:を付け鼻で演じたサム・ロックウェルの姿が可笑しい。先日亡くなった「パパ・ブッシュ」ことジョージ・H・W・ブッシュのバカ息子として、僅かな得票差で第43代アメリカ大統領にのし上った男を、TVドラマのコメディ俳優のように嬉々として演じる。本当に似ているコリン・パウエル(タイラー・ペリー)やラムズフェルドの南部訛りも相当に痛快だが、チェイニーにとって、妻リン・チェイニー(エイミー・アダムス)とラムズフェルド、ジョージ・W・ブッシュとの3つの出会いが、その後の彼の地位や名誉に決定的に影響を及ぼしてしまう辺りに、権力の怖さを痛感させられる。あの2002年1月29日、ジョージ・W・ブッシュ米大統領は一般教書演説は、決して大統領の信念ではなく、副大統領のチェイニーの差し金だったとは驚きだが、その権力をどういう意図で行使していたのかはいまいち判然としない。

今週金曜日21時〜ミヤラジ77.3FM『We Are Movie Lovers,』は、、、
バイス公開記念!!「実話ベースの映画」特集!!
グリーン・ブック、ブラック・クランズマン、バイスなど、
最近、立て続けに公開された「実話ベースの映画」を紹介すると共に
アメリカで実話ベース映画が好まれる理由、その傾向などを多角的に考察。
ゲストは栃木朝日の石川編集長です。
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