ShiroKyogoku

バイスのShiroKyogokuのレビュー・感想・評価

バイス(2018年製作の映画)
4.0
アメリカの政治や外交に関心がなくても、とてもわかりやすく時にコミカルな形でチェイニーを軸にして近代のアメリアの政治を知ることができる面白い作品だと思う。

チェイニーが政治の世界へ足を踏み入れた、ニクソンの頃のキッシンジャー外交、デタント期の終焉あたりからオバマ政権誕生までの時期までの彼の話。
彼を決して偉人であるとも悪人であるともせず、彼自身のイデオロギーの揺らぎも人間らしく描いていた部分には映画作品として好感が持てる。

彼の政治思想や、息子ブッシュ政権下の副大統領としての9・11以降の政策については、話し出したら永遠に終わらないし、映画の内容ではなく政治の内容になるから置いておいて、クリスチャン・ベールの演じる主人公は勿論のこと、俳優陣がそっくりすぎて面白かった。
肉ばっか食べてていつも他力本願で適当そうなブッシュ、とにかく公の場でも口の悪いラムズフェルド、政権に組み込まれながらもほとんど何も出来ず唖然としてばかりのライス、穏健派であの戦争の始まりにも慎重であり続けたパウエル等、それぞれの立場がわかりやすく表現されていて良かった!

ちょいちょいブッシュに対し耳元でささやくチェイニーの声がバットマンが諭すときの声にしか聞こえなかったけど(笑)

ブッシュがイラクへ攻撃を始めた時の演説の貧乏揺すりと、その時攻撃を受けたイラク市民の怯えた足の震えの対比は、それだけで戦争の全てを語るほどの自分にはインパクトのある映像表現だった。

そして、エンドロールに挟まれた短いやり取りは、現在のアメリカの状況を端的にうまく顕していて、こんなところも見どころに、と笑えた

「記者たち」と重なる部分が多いので、併せて観ると更に面白いと思う!
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