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生きてるだけで、愛。のmのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.3
私は私と別れられないって、誰にとっても当たり前だけど残酷でもあるな。

自分と重ねるのは無理だから寧子の気持ちを本当に理解することはできないけど、頑張ろうと思う気持ちは本物なのに些細なことでだめだと感じてしまうのはつらい。
でも現実として自分もあのカフェバーの人たち側であるのは確かで、外面では受け入れる姿勢でいても、いや受け入れる気持ちが本物だとしても、根底ではあの人は自分たちとは違う、理解できなくて当たり前だという認識があるはずで、それを本人は私たちの思う以上に繊細に感じ取ってしまうものなのかもしれない。
だから寧子がそれに気づいたシーンは悲しさと罪悪感の混ざった複雑な気持ちに。

津奈木は寧子と初めて会った夜、そんな寧子と何かがはまったのだろうと思った。
中盤だんだん津奈木が自分のことでいっぱいいっぱいになって、そっちが壊れるんじゃないかと思ったけど、もともと二人とも壊れていたのかも。人間みんなどこかおかしい。(どこかで聞いたセリフ笑)
そんな中で、この二人の距離感はちょうどよくも思える。
全力で生きてる寧子には津奈木が必要だし、感情を表さない津奈木には寧子みたいな人がある意味羨ましく映るのだろう。

とはいえ本当の意味でお互いを理解できているのか分からない絶妙なバランスの上で成り立ってきた二人。間違いなく言えるのは、愛がなければ絶対に成り立たない絶妙なバランスということ。

「生きてるだけで疲れる」けど、「生きてるだけで愛」か……


綺麗じゃない綺麗事じゃないことを美化せず、それでいて映像は趣里と菅田将暉の、一筋縄ではいかない系統の美しさが生きていて、フィルムの映像も味わい深くて、主張しすぎないけれどここぞというところにはまる音楽も良くて、なんかとても好きでした。また見たい。
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