松井の天井直撃ホームラン

生きてるだけで、愛。の松井の天井直撃ホームランのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
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☆☆☆★★★

原作読了済み。

原作を読んでの率直な感想は。「何だこのクソ詰まらない話は!」だった。
拗らせ女が吐露する自分語りの承認欲求は。ただひたすら読み手の心を苛々させるだけで、「一体何なんだよ!」…とゆう気持ちにさせられる。
「これを実写化して果たして面白くなるの?」…と。
ただ、世の中に巣食う腐女子と言われている人達から、ひょっとしたら「分かる〜!これは紛れもなく私の話だ!」…と、共感を受けるのかも知れないとは思った。

鑑賞後に思う率直な意見として…。

「まさかここまで面白い作品になるとは…」

原作自体が100頁強と短い為に。寧子がバイト初日に、ウォシュレット問答から爆発・暴走し、最後の屋上の場面へ至るのだが。
映画は、そのバイト初日までを僅か30分足らずで達しており。この先どうなるのか?と思っていたところ。映画オリジナルにあたる、津奈木の仕事先での話+寧子のバイト先でのエピソードを追加させていた。

そして何よりもこの作品を成功させている…と思えたのは。何と言っても主演の趣里に他ならない。
最初に画面に映った時には、原作を読んでいた時のイメージとは少し違っていたのだが。映画が進んで行くに従い、段々と寧子そのものだと思えて来た。
面白い女優さんが出で来たなあ〜と、今後が楽しみになった。
大作映画で主演を張るタイプでは無いと思うのだけど。この作品の様な小品にならば、脱げる分だけ、様々な作品に使いやすい気がするだけに。ひょっとしたなら、蒼井優のポジションを奪ってしまうのではなかろうか。

彼氏の津奈木役には菅田将暉。
2017年は菅田将暉の躍進か目覚ましく。それを思うと、今年はそれ程目立つ感じでは無かったのだけれど。昨年の攻めの演技と違って、この作品では一転して受けの演技。
何かと事なかれ主義に見える津奈木。確かにこれでは、拗らせ女子からも非難を浴びても致し方無い。
原作を読んだ時には、それ程感じなかった。津奈木とゆう男の、寧子の病みを静かに受け止める包容力。
そんな津奈木とゆうキャラクターを、菅田将暉は巧みに演じていた。

安堂とゆうストーカー女役には仲里依紗。
これは逆に原作のイメージを越えていたかも。
仲里依紗の笑顔は最高のホラーだったなあ〜。

「これで終わり?だから何だったんだ!」と思った原作のラスト。
勿論、映画もそこで終わる訳だけれど。2人の演技の熱も有るのだが。この新人監督の、確かな演出力も有って。あれだけ苛々させられる話だったのに。最後はいつの間にか納得させられてしまい、不思議な幸福感に包まれていた。

2018年11月11日 TOHOシネマズ錦糸町/No.6スクリーン