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生きてるだけで、愛。のmimotoxmimotoのレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
3.9
躁うつで過眠症の主人公が自分自身と重なってしまって、とてもじゃないけど正常な状態では観られなかった。
自分がおかしいせいで、人の善意を裏切るかたちになってしまうつらみとか、身を切られるようだった。

趣里の身体の動き一つ一つが生々しく映画に生を与えていた。菅田将暉の凍てつく視線はさすがだった。フリージャズのような世武裕子さんの劇伴はすっごくよかった(エンディング曲もすっごくよかった)。二人の暮らすアパートのロケーションもよかった。

ただ残念ながら、(原因が描かれない)躁うつを繰り返し、生きてるだけで疲れ果てている状態なのに、それでも「誰かと一瞬でもわかりあえることで生きられる」なんてことはファンタジーでしかないし、その、ファンタジーは結構つらい。躁うつで苦しむ主人公の現実と内面に深く踏み込まないのは安易だ。

原作未読なので、もしかしたら本作は違うかもしれないが、本谷有希子の書く女性は、いつもそのエキセントリックさが消費されるだけの存在になっていることが気になる。躁うつ状態(双極性障害)がどういうものかわからない人には誤解されるような描かれ方だし「精神疾患で苦しむ人間っておもしろいよね、てかたまにすごく美しいよね、人間臭いよね」みたいな乱暴な価値観に包まれて、実際の苦しみに寄り添う視点がないように感じる。わたしはいろんな人が気軽に使う「人間臭さ」とは何かといつも考える。それは偏見に満ちたとても怪しい概念だと思う。
また「エキセントリックな女性」に惹かれる男性の動機も手垢にまみれすぎてて、もうそういうのいらないなとも思う。

こんなに問題点があっても☆3.9になっちゃうのは、自分に引き寄せすぎてるからで嫌になっちゃうけど。

あと、主人公の衣装が全部飛び抜けてかわいかった(うつ状態でパパッと着た服があんなかわいいなんてことはないんだけど)。2018年邦画部門ではたぶんダントツのかわいさ。
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