矢吹

生きてるだけで、愛。の矢吹のレビュー・感想・評価

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.2
「他人に自分の全部が見透かされてる気がする」
同じことを感じてるけど、その対応が二人は違う。
他人に表現しない男と、他人と関わらないようにする女。
自分を殺し続けて来た男と、ある日、無理矢理引き摺り込まれた社会に向き合う女。

夜と停電と光の使い方が最高。
躁と鬱と赤と青が輝いてましたね。
トイレの撮り方とかも好きで。
暖め続けた静寂からの疾走感も素敵です。

自分とは別れられない。
生きてるだけで疲れる自分と寝てるのは死んでるのと同じと言うあいつ。
自傷行為の勢いが凄すぎて、めちゃくちゃ引き込まれたな。趣里さん、すごいわ。自分以外にはぶつけようのない怒りがまさに痛いほど伝わる。あるよね。そういう時。そんなんばっかりかも。
趣里さんは顔がいいですよね。すごいいい。とりあえずでも、キャスティングしときたくなる感じする。いい顔。

過眠症の主人公の寝落ちの演出とか、夢か現実かわからなくなる瞬間とか、起きたら夕方の苛立ちとかがすごい身にしみた。観客は実際に体験させてもらえるんですが、怖すぎる。
正直、精神病とかって、結局は心理的なもんでしょって思ってた。作中でももちろん触れられるんですが、そう思われてることなんて本人が一番知ってて、だからこそ遣る瀬無いものに感じる。それでも人生は続くし、もがきながら生きてる。社会に対しては彼女は頑張ってた。そこでより感じる怖さと辛さ。
彼氏には理不尽な態度やったけど、まあそれは2人の関係やし、彼女にとって本当に必要な存在であることの裏返し。
この話の結論でもなんでもないけど、映画を見ながら、もはや出て来てる人物はみんな何かしらの病気な気がして来たし、そもそも、この世はみんな、何かしらの病気な気もして来る。すごくポジティブな意味です。どんな自分でも、自分と生きていくほかない。

人間なんて一瞬でも繋がれれば万々歳なんですかね。わかんねえや。最初から変な怖さがずっとあって、見てる内にはしんどくなるけど、終わってみれば、妙に元気をもらえた映画で、不思議なもんです。ポイント高め。

トイレの中にいて、
他人の会話が聞こえてくる
確実に自分の話
でも、そのところどころが絶妙に聞こえない。
あのシーンは個人的最高潮。
あれなんで悪口にしか聞こえへんねやろな。
ゴシップとか噂話とか人の話で笑うのが大嫌いって言ってたのが急速に落下する。腑に。

要するにこの愛は自己愛。

が中心に据えられてた。と思う。
生きてるだけで、愛。
矢吹

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