毎朝…早めに家を出て埠頭に寄る…
岸壁に今朝は船は入っていなくて何人かの釣人がいるだけ…
車を停めるとすぐにスズメたちがドアミラーの上に来る…車にいつも積んでるパンをあげる…
おれが仲良しのハシボソカラスの礼二(れいじ)は今朝はまだ姿が見えない。
邦画って…
まあだいたい日本人の監督が日本人の役者使って日本語で作られています…
だから刺さるときは洋画より鋭いし、受け付けないときは途中で観るのやめちゃうレベル…
「生きてるだけで、愛。」
原作も知らんし、よく知らない監督とよく知らない主演女優…菅田将暉出てるんだ…
観始めると…
うわぁ…何こいつ…何か勘に障る!
いるいるこんなヤツ…神経逆撫でする口のききかたするヤツ…自分がそれを言われるとコタエルってわかってるから言うヤツ…
観るのやめちゃおうかな…
何で無理して嫌いなヤツみて不快な気持ちにならなきゃいけないんだ…
いや、そもそももう寝ないと…明日も早くから仕事だし…面白い映画でもやめて寝ないとヤバい…
ところが…
もう、この寧子(やすこ)から目が離せなくなってる自分に気付く…
趣里?
おいおい、鬱で過眠症で仕事に行けない女の子の映画を観て、おれが寝坊したらどうしてくれる?
仲里依紗!
ゼブラクイーン以上のベストアクト…サイコで最高!
寧子がこの仲里依紗と茶飲むとこがとにかくおかしい…ヤバいこの映画ますます面白くなってきた…
「あんた…私をバカにしてるでしょ?」
「いえいえいえ…そんな…ばかになんか…はい!」
そのカフェの人たち…田中哲司たち…
おそらくホントにいい人たち…善意の人たち…
だけどさ…その絶対的な正しさってなんか胡散臭い…ある意味うざいんだよ…
そんなことを思うなんて…トンでもないほどいい人たちなのに…何か裏があるんじゃねえか?偽善者なんじゃねえのか?と疑うおれは全く寧子とおんなじだぁ…
トイレに逃げ込むしかないのか?
菅田将暉!
この人ぐらい多才で絶大な人気があってテレビにも映画にも引っ張りだこだと…どうしても少し薄れてくるもんだよ…
ところがこの映画での彼はどうだ?
優しいが優柔不断…仕事で追い込まれて寧子に絡まれた時の氷のような眼…
凄かった…濃厚な演技!
やっぱり菅田将暉すごい!
そして、何より寧子を演じる趣里…
この人じゃなかったらおれはこの映画途中で観るのやめてたかも…
映画終わってすぐに調べたら…なんと両親が水谷豊と伊藤蘭…これにはホント驚いた。
全然2世感ないねー。
やはりこの映画に出てる石橋静河もすごいけど一瞬若い頃の原田美枝子に生き写しだったりしてサラブレッド感ある。
この趣里はお腹すかせた野良猫みたいな演技をする…
まさか2世俳優とは思わなかった…
素晴らしい!
「岬の兄妹」
「きみの鳥はうたえる」
「カランコエの花」
「キングダム」(これはジョークではないよ)
最近の邦画はすごいなぁ!
朝の埠頭でこのレビューを書く…
車の窓から出したおれの右腕に1羽のスズメが留まる…首をかしげて…
「パンはまだありますか?」
って聞いてるみたいだ…左手でそっとパンの欠片を差し出すと美味しそうに食べる…
思わず写メを撮って知り合いの女の子にラインする…
「ほら!おれの腕でスズメが朝ごはん食べてる!」
しばらくして返事…
「もはや…あなたの友達はスズメだけ?(笑)」
ばか野郎…カラスの礼二だっているんだ…今朝はまだ来てないけど…
確かに生きていくのは疲れるが…こういう映画を見続ける人生もけっこう疲れるぜ…でも…こういう映画から与えられる何か一瞬感じるもの…そのお陰で生きていける…