かな

生きてるだけで、愛。のかなのネタバレレビュー・内容・結末

生きてるだけで、愛。(2018年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

本谷さん、さすがだ。
「自分の何かがみんなに見抜かれてる気がする」
私がずっと求めた言葉はきっとこれだった。その何かを半狂乱でひた隠しに生きていることへの羞恥心や、それを見抜かれてるかもしれないことに怯え恐怖する愚かしさを感じるツナキは、だからヤスコに惹かれたんだろうな。
「皆すっごい良い人。だけど、なんか違うんだよなぁ」
家族なんだからって、なんとかなるよって、寂しいだけなんだよって、絵に描いたような温かい言葉をかけてくれるバイトの人たちのおかけで、うまくほぐせない心がだんだん溶解してきて、ほんのちょっと自分の芯を見せる。そのとき話したたかだかウォシュレットの話でさえも、相手のその温度や表情や視線や言葉で私は見抜かれているのだと悟る。もうごまかせない。終わりだ。
彼女の買い物のシーン、寝起きのシーン、細かいところに共感が散りばめられている。なんで買い物さえもうまくできない?ひき肉がないならハンバーグじゃなくてもいいのに、味噌買い忘れたなら別のスープでいいのに、買い忘れた自分も、切り替えもできない自分も何もかもが許せない。
たかだか朝起きるだけのことなのに、なぜそれができない?目覚まし時計で頭を殴ることでやり場のない自分への怒りを収めるしかない。
「私は私と別れられない」生きてるだけで疲れるこんな自分と、どうやったって付き合っていかなきゃいけない。その絶望とやるせなさ。
少しだけ分かり合えたその瞬間だけで、生きていけるほどの鮮烈な愛がある。
かな

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