RIO

父、帰るのRIOのレビュー・感想・評価

父、帰る(2003年製作の映画)
5.0
二つの塔
海深く沈み沈黙している朽ちた舟
あらゆる象徴的な表現が散りばめられていた

家族で撮った古い写真の父親の姿

音が鼓膜に細かい振動を与える
グラスに注がれるワインの音 
兄弟の夜中のささやき
音響が素晴らしすぎる 
全然知りませんでしたがアンドレイ・デルガチョフ

目線の先にある気になるものがクローズアップされていく
この監督の撮り方が好きです
あまりの映像美に感涙

父親がある日突然
家族のもとに帰ってくる
父親がイエス・キリストのように眠っている
マンテーニャ「死せるキリスト」
の絵のように横たわっている

空白の12年間

時代考証をできる限り限定しないで
時代がわからないようにしてある
そのため不思議な世界観 
画面に静かに広がる海 
そこにある小さな島
テントの中で向かい合っているイワンとアンドレイが
暗闇に照らされる宗教画みたい
イワンがカモメの死骸に小さく手を振ったり
あんまり言いたいことを言い過ぎて父親がブチ切れて
置いてかれてしまい一人で助けを求められず
雨の中土砂降りに身をさらしている
まだあどけないイワンにある受難がおとずれる

父親は厳しいけれど深い愛情をもっている
あんなに大変な思いをして取りに行った
土まみれの金属の箱は何だったのか?大切な人間の記憶

兄アンドレイのウラジミール・ガーリンが
むっちゃくっちゃカッコイイー!

兄弟がボートに父親と乗る
二つの弧を合わせた楕円形のなかにいる父親
これはイエスであって
二つの弧を延長していくと二つの円になり
それぞれが生と死を表す 
生と死が重なる部分
これは私にとって変容を示す表現なのだと監督は言っている

ラストはまるで幻であったかのように消えていく
大事なものを失って
 最大の物を得る
旅の途中の写真が泣けました
とにかく笑えるところは一度もないしグッとくる

見終わって体中が瑞々しさで満たされる

アンドレイ・ズビャギンツェフ監督は無名の存在だった
本作は長編映画デビュー作であって
ヴェネチア国際映画祭ではグランプリ金獅子賞と新人監督賞を受賞
初監督作品にしてグランプリ

Jeffreyさんのレビューで知りました
youtubeの映画レビューで社会背景とか大事なイデオロギーを
熱く語っているので見応えありますよ!

エンディング曲の
Andrey Dergatchev 「Final Titles」
RIO

RIO