父親が父親になるという事は想像以上に難しいのかも知れない。
お腹に10ヶ月居て生まれて母乳を飲ませ育児して…
ゼロから育まれる母子の絆とか母性のそれとはまるで違う。
不器用な父と二人の息子の、痛みを伴う静かなヒューマンドラマだった。(と思う)
12年ぶりに帰って来た父。何故不在だったのか、何処に居たのか、全く描かれない。ましてや本当の父親なのかさえ疑問に感じながら観進めていった。
優しい言葉もなく、ハグするでもなく、ただ背中で語る父親の姿に徐々に父子の距離は縮まって行くかに思えた。
が…
語らない映画の代表格とも思える作品だった。となると当然、演じた父子3人の演技あっての作品でもある。そして、風景に語らせるが如くの風景美が心を捉えて離さない。とんでもなく心を揺さぶる。
意地悪なくらい情報を与えて貰えない代わりに、意地悪なくらい衝撃的な悲劇を見せつけ観る側の気持ちをへし折る。
子供たちが背負った十字架があまりにも重すぎて気持ちが追いつかない。
色んな意味で想像が膨らむ作品だった。
単純に父と子の、もしくは息子2人の成長物語とは言いきれない含みを感じ、ゾワッとする感覚も否定出来ない。
ばら撒くだけばら撒いた伏線は一切回収されず最終的にモヤッとする心地の悪い何かをそっと置いて行く感じは、個人的には嫌いじゃないけれど。
もしかしたら斜に見ちゃダメな作品なのかなぁ…
お国柄とか、社会的背景もあるのかなぁ…
答えは出ないけど深読みしてしまった。
ともあれ比類ない個性を放つ作品に違いない。観る人を選ぶ作品とも。