継

父、帰るの継のレビュー・感想・評価

父、帰る(2003年製作の映画)
4.0
12年ぶりに帰って来た父親。
晩餐の主席に座り、パンとワインを皆へ分け与え、息子たちを旅行へ連れて行くと告げる。
祖母と母親はとりたてて父子の仲を取り持つ事もなく、走り出す赤い車をただ見送り、家へ置き去りにされる。

1回観て頭の中が「?」だらけになり( ̄▽ ̄;)、結局3回観ることに(笑)。
何処で何をしていたか、何故今帰ったか、電話、箱、暗号の様な「12」の意味....
ストーリーは寡黙で、観る者は兄弟の視点でしか映画を観られません。

'03年の作品。原題は「帰郷」の意味らしい。
何も語らず、空白を埋めようともせず、二人を抱き締めさえしない父親は、
公の場での振る舞い、約束の厳守、弱肉強食の社会で生きていく術(すべ)、兄弟で力を合わせ助け合うことを二人へ教え、実践させる。

父親を受け入れる分別がある兄は、関係を築こうと腐心し、その過程で己に欠けていた強さを学ぶけれど、
弟は平穏な暮らしを脅かす異物の様な男に反発して溝を広げ、予期せぬ悲劇を招いてしまう。。
高台から海へ飛び込めず、母親が迎えに来るまで膝を抱えて泣いていた幼さは、父性の威厳よりもまだ、包みこむ母性の優しさを求めていたと言うことか。

キーワードは父権主義、体制の変化でしょうか。
宗教的比喩を込めた映像と心象風景の様な自然の光景は詩的で、映画の印象を高めるものでした。

初めて “ワーニャ” と呼んで救おうとし、初めて自らの意思で “パパ!” と呼んだ波間を、役割を終えたかのように彼岸へ流れ行く小舟。
思いがけず互いを呼んだその声が、父子の絆を辛うじて伝えていました。