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父、帰るのkのネタバレレビュー・内容・結末

父、帰る(2003年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

音信不通だった父親の12年ぶりの帰郷に戸惑う兄弟を描いた映画。

最後まで見て思うことは、恐らくみなさん一緒ではないでしょうか。父親は一体何者だったのか? と。作品を通して描かれるのは、兄弟と12年ぶりに帰ってきた父親との交わり。その様子は兄弟たちの目線で描かれているので、父親の姿、存在は謎でしかないんです。本当に父親なのかという疑問さえ浮かぶほどに。で、その謎は回収されることのないまま父親は死んじゃうんですよ。父親が無人島へ連れて行ったことの真意、レストランでの電話相手、無人島での箱の中身、そして父親の正体と12年間の空白の謎、すべてが謎のまま終わる映画なんです。

ただ、兄弟と父親とのロードムービーとしてはとても共感性の高い作品です。12年間父親を知らずに母親と祖母と生活していた兄弟にとっての、突然の父親の登場に困惑する様子。素直にパパと呼んで良いのかも分からず、対応もそっけない。特に弟の方は反抗的。一方の父親も、明確な描写はないものの不器用で、息子たちへの接し方に戸惑っている様子。しかし、12年間女手で育てられた息子たちに父親がいる生活というものを教える教育的な一面がなんとも魅力的です。やや暴力的で粗い教育でもあるんですが、筋は通っていて決して間違った教育ではないんです。ただ、兄弟たちからすると、特に弟からすると突然現れた父親と名乗る男に説教口調で指摘されても、「何を偉そうに」となってしまいます。お互いのこのすれ違いが、結局終盤の悲劇に繋がる訳なんですが、どちらの気持ちも理解できるからこそ苦しくなるんですよね。

さて、せっかくなんで、上記の謎の考察を。まずは父親の正体と12年間の空白の謎について。父親の正体は間違いなく兄弟の父親でしょう。これは見ていて疑いようがないというか、教育的な熱量から見て父親しかあり得ないですね。そして、12年間父親が何をしていたのか。見ていて思ったのが、遠洋漁業の漁師? ではないかと。これはまぁ個人的な一説に過ぎないんですが。どうしても謎なのが無人島へ行ったことの真意。単純に男3人だけで居たかったか、それにしては何もなく、ただ過ごしていた印象。そこで気になるのが、父親が散歩と称して出かけた際に、穴から出した箱。これには一切触れられずに終わってしまいますが、恐らくこれを渡すことが目的だったのでしょう。肝心の中身に関しては想像する他ないですが。

あとこの作品、青がすごく綺麗! 海の青に空の青、全体的に景色がすごく綺麗に撮られている印象ですが、青の絵は特に美しいです。色味も若干青みがかっているのも狙いでしょうか。
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