りんごチャン

父、帰るのりんごチャンのレビュー・感想・評価

父、帰る(2003年製作の映画)
4.5
ロシア映画と聞くだけで何かしらの予防線を張ってしまうところだけれど、そんな憂慮は無用の金獅子賞も納得の忘れられない作品となった。

12年間父親不在で育ってきた兄弟の前に突如現れた“父親と思われる“男。その男と過ごす兄弟の1週間を描く。

物語はもちろんのこと静かながら全く気を削がれることのない撮影の妙。景色も相まって視覚が満たされるのを実感。上手いとかベテランとかではない超自然な演技を見せた役者陣がとっても魅力的で脳裏から離れない。ラストはもう何と言えばいいか…

この作品の魅力は、1時間以上にも及ぶ特典映像で更に増してしまった。なかでも兄役だった少年(ウラジーミル・ガーリン)が、撮影後に作中に出てくる湖で溺死したと知りショックで打ちのめされてしまった。

「ソフィアの夜明け」でもそうだったが、亡くなる直前の演者を観ていたと後で振り返ると本当に悲しくなる。彼は亡くなったけれども映画の中の彼らは確実に成長したのだ。