フィルモワ

旅するダンボールのフィルモワのレビュー・感想・評価

旅するダンボール(2018年製作の映画)
4.0
▪︎「不要なものから大切なものへ」をコンセプトに、ダンボールを使って創作活動するアーティスト、島津冬樹を追った小旅行。ゆったり、飄々とした記録映画ではあるんだけど、思った以上に《作ること》の真に迫ってもいる。ほかほかと、前向きになれるドキュメンタリーでした⠀

▪︎自分も包装紙など集めてしまいがちなので、島津さんには共感しかなかった。観ていても「あぁ、あの箱かっこいいな〜」って純粋に楽しい。でも、なにより彼の素敵なところは、ただコレクションを並べて悦に入るのじゃなくて、その見捨てられたモノを一旦自分のところで仕立て直して、誰かに届ける愛の深さじゃないだろうか。何て言うんだろう、モノを独占したり、支配するんじゃなくて、本来あるべき役割ーヒトとヒトを結ぶ仕事を、ちゃんと与えてあげてるっていうか⠀

▪︎彼が見出した、徳之島POTATOのダンボール。この箱の背後にある物語を辿るように、記載されていた青果市場へ、そこから印刷会社、そして既に引退されているデザイナーさんのお宅まで訪ねていく旅は、もう涙なしには観られなかった…。仕事って、届けたらハイ終わり、じゃなくて、撒いた種がどこかで芽吹いた時にやっと完成するのかな、なんて思ったり⠀

▪︎改めて、ダンボールの機能って何だろうなって書き出したら、《まとめる》《まもる》《しらせる》の三つ思いついた。そうしたら、世界にバラけている良いダンボールを拾い集めて、その価値を伝えてくれる島津さんと、なんだか重なってしまうんである⠀