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旅するダンボールのSyoCINEMAのレビュー・感想・評価

旅するダンボール(2018年製作の映画)
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価値観が変わるだけじゃない! 観る人皆を笑顔にしちゃうアートなドキュメンタリー
~「旅するダンボール」のココが面白い!!~

今回は、12月7日に公開された「旅するダンボール」をご紹介。
世界30カ国を回って捨てられたダンボールを集め、財布や名刺に作り変えてきた気鋭のアーティスト・島津冬樹さんに迫るドキュメンタリー。
僕が考える本作の見どころ・面白ポイントはこんな感じ!

【物語】こんな人見たことない! 
    ダンボールアーティストの“生態”がツボ!

【発見】視点・着眼点がとっても斬新! 
    「ダンボールの魅力」に目からウロコ

【裏側】ダンボールってこうやって出来てたの? 
    普段知らない“職場”をのぞける

【効能】「好き」に生きるってこういうこと! 
    観ているだけで笑顔になれちゃう

<あらすじ>
多摩美術大学出身の島津さん(http://carton-f.com/)は、学生のときに「財布を買うお金がないから作っちゃおう」と思い立ち、近くにあったダンボールで財布を作ったそう。その後、文化祭のフリーマーケットに出品するなど、どんどんダンボールの魅力にはまり、2009年から現在まで世界中を旅してダンボールを拾い集め、お洒落な財布や名刺入れに生まれ変わらせるアーティストへと成長していった。
映画は、3年間彼に密着し、日本全国のみならず世界各国を回って地域の人々を笑顔にする彼のワークショップや、熊本からやってきたダンボールのルーツをめぐる旅に同行し、1枚のダンボールに込められた人々の想いを明かす内容になっている。


面白ポイント①:【設定】
【物語】こんな人見たことない! ダンボールアーティストの“生態”がツボ!

まず声を大にして言いたいのは、この島津さん本人の飛びぬけた魅力。とにかくまぁ、観ているだけでワクワクさせられる人だ。この方、ダンボールが好きで好きでしょうがない。世界を回ってダンボールを探し、「出会った」瞬間の喜びようといったら。
こんなに楽しそうに笑う人なかなかいないぞ、っていうくらい幸せそうで、最初は「え、ダンボールになんで!?」ってなっちゃう。のだけれど、いつしか気づく。「そうか、これは宝探しなんだな」って。そうして、僕たち自身も元気をもらえてる。ある種、「人生の楽しい生き方」を教えてもらえるような感じだ。

単純に、この人を観ているだけで面白いし楽しい。朝から晩までダンボールのことを考えていて、ダンボールが好きで好きでしょうがない。とことんピュアに、「好き」って気持ちで生きている。

映画としての新鮮さ、つまりダンボールアーティストとしての活動も目を引く。財布を作る工程にももちろん密着するし、ワークショップの内容も興味深い。
ただ、やっぱり一番印象に残るのは島津さんの笑顔だ。みんながみんな、好きなことで生きていけないものだけれど、やっぱり好きなもの・ことのために生きている人って輝いているなって嬉しくなってしまう。

ただ、映画は彼が広告代理店に勤めていたときのことも紹介して、集団では相当浮いていたのだろうなということも感じさせる。映画の中では笑い話になっているけれど、きっと当時は相当な苦労と葛藤があったはずだ。だからこそ、本当に好きなことのために会社を辞めて進んだ彼がカッコいいと思える。

島津さんの人間としての魅力が、かわいらしいアニメーションなどを混ぜ込んだお洒落な演出もあいまって、しっかり凝縮されている。10分も観ればきっと彼のことを大好きになるだろう。“欲”とか“打算”が見えず、あふれんばかりの“愛”でいっぱいになるからだ。


面白ポイント②:【発見】
視点・着眼点がとっても斬新! 「ダンボールの魅力」に目からウロコ

そんなにダンボールを愛してやまない島津さんの「視点」も、非常に面白い。
例えば「お洒落なダンボール」と聞いて、あなたはすぐ思い浮かべられるだろうか? すぐには思いつかないだろう。僕も、金がないときにナイキのシューズボックスを物入れに使っていたなということくらいで、普段はそこまで気に留めていなかった。

でも、島津さんはダンボールを「アート」として見ている。お洒落なデザインのダンボールを拾うと嬉しくて小躍りしちゃうし、デザイン性についてしっかり解説してくれる。そこで使われる言葉も学術的な硬いものじゃなく、「ここがいい! ここがお洒落!」といったような心にすっと浸透するものばかり。まるで嫌味がないから「そうかそうか、そうやって見ているんだな」ってこっちもどんどん興味を持ってしまう。
そうした新たな価値観を見せてくれる部分が、すごく楽しい。

例えば、地球環境の保護という観点から考えて、リサイクルやリユースから一歩進んだ「アップサイクル」という考え方は、この映画から学べることの1つで、誰も見向きもしないゴミに価値を付加した、ということは大変素晴らしいことだ。

ただ、そういう社会的な観点はあくまで副産物的なもの。元々の彼の原動力は、ダンボールへのどうしようもない興味だ。そんな彼が劇中で言う「ダンボールの底が好きなんです」というセリフはとっても面白い。
島津さんは「ダンボールの底にある“すった跡”がいい。物語を感じる」と愛おしそうに語る。な、なるほど……そういう考え方があったのか。そんなシーンがこの映画にはたくさん詰まっていて、終始「へえええ!」ということばかり。


面白ポイント③:【裏側】
ダンボールってこうやって出来てたの? 普段知らない“職場”をのぞける

映画では、島津さんと一緒に1枚のダンボールがどのようにして彼の手に渡ったのか、その「旅」を逆にたどっていくパートがある。彼がある日見つけ、心を奪われた1枚のダンボール。それは、鹿児島県の徳之島産のじゃがいものものだった。そこから彼は九州へと旅立ち、ダンボールの生産工場、さらにはデザイナーを調べ、自宅を訪問する。そして……。この先に待っている感動的な展開は、ぜひ映画を観ていただきたい。

ダンボールって、毎日のように使っているのに、どんな風に作られているのか全く知らなかった。この映画を通して、ダンボールの作られ方も観られたし、1枚のダンボールにこんなにたくさんの人が関わっていて、それぞれの方の想いがあるんだ、と知ることが出来た。月並みな言い方になってしまうのだけれど、実に「深い」のだ。
たかがダンボールと舐めていたけれど、これからは見る目が180度変わりそう。多分、映画を観た後は、あなたも僕と同じ気持ちになると思う。この映画にしかないものが、ちゃんと詰まっているのだ。


面白ポイント④:【効能】
「好き」に生きるってこういうこと! 観ているだけで笑顔になれちゃう

そして、この映画の素敵なところは、観終えた後に訪れるとびきりの爽快感。ドキュメンタリーをたくさん観ているわけではないけれど、この作品は正直相当見やすくて、普段このタイプの作品を観ていない人にもちゃんとハマると思う。

1つは、①でも挙げた島津さん自身の魅力。そして、やっぱり「好き」って気持ちが持つ美しさを存分に感じられるからだと思う。
僕たちは日常を生きていて、やりたいことよりもやらなくちゃいけないことに時間を割かれるし、お金がなければ話にならないからいろんな想いを押し込めて会社に行ったりバイトをしたりしている。楽しいことばかりじゃない。むしろ、つらいことの方が多いかもしれない。

そういう日々を送る中で後回しにしてしまい、いつしか忘れかけていた「“好き”って気持ち」の素晴らしさを、この映画は再認識させてくれる。
何か解決策をくれるとか、道を示してくれるとか、そんな大仰なつくりじゃない。ただ、リスクを冒しても自分の気持ちに正直に生きているアーティストを見つめるだけ。でも、それで十分だ。

きっと、大事なのは「納得」だと思う。今の自分を受け入れるのか、そうでないのか。受け入れるのであれば毎日の楽しさは増すだろうし、反発するのであれば未来への思いは増す。多幸感にあふれた作品を観て、とっても暖かく爽やかな気持ちになった後は、自分のこれからについて考えてみるのも良いかも。僕はこの作品を観たことで、島津さんのように心から笑えるように、もっと「好き」を大切にしていこうと思った。同い年なのもあるけど、勝手に勇気をもらえた感じだ。

ダンボールって、きっと何かを護るもの。
だからこんなに、暖かいのかもしれない。